6時間目が終わってからというものの私は感動で打ち震えている。8時30分に始業で1時間休憩の16時退勤だって?めちゃめちゃホワイト企業だ!と思ったが実時間は6時間半か。バイトくらいな感覚かな。働いているわけではないが。
明るいうちに帰れるのは嬉しい。
ちなみにあのあと作画を確認しにいった。
なんていうか漫画家が知り合いの娘の似顔絵を描いてくれと言われて、「あんまり忠実に描くのもな〜」って特徴を残しつついい感じに美少女にまとめてくれた絵をキレイにアニメ化した、そんな感じ。つまり悪くなかった。失った青春チャンスだ。
学食は美味しかったし!
何が起こってるのかわからないほど豪華なのにワンコインでますます学費が心配になってきた。帰ってからそれとなく母親に探りを入れないと。
「きりちゃんバイバイ〜」
「ばいばい!今日ありがと〜」
「ううん、また明日!」
休み時間に話しかけてくれた子、ちょっと案内もしくれた子がちらほらと帰りの挨拶をしてくれる。子供の頃のあだ名を教えると、すぐ親しみを込めて呼んでくれるようになった。
ふつうに新しい友達ができるの新鮮だなー。
なんとなく嬉しくてニコニコしながら鞄を持って校舎の本館を出る。ここは別館が多くて移動教室が大変そうなので、パンフレット片手にちらっと見てから帰ることにした。
「ここが交友棟……で、テニスコートと」
テニスコートひっろ!
グラウンドも十分広かったが、テニスコートは整備されて綺麗なものが三面もある。まあテニプリに出てくる強豪校だもんな。
なんでもテニス部はもともと伝統的に強くて、最近は新部長になってもうイケイケのノリノリらしい。主に跡部くんのおかげで。すごい。
(活気あるなー)
遠目でグラウンドを見ているだけでも見学者が多い。それに部員数も相当多い。全体で約1,600人のうち200人もいるというのだから、かなり勢いがあるんだろう。
赤茶と深い緑のコントラストが鮮やかなテニスコートの端で、ぽんぽんと黄色いボールを跳ねさせている忍足くんを見つける。絵になる風景だなと横目で見ていると、パッと目があった。
手を振ってみる。
普通に振り返してくれた。良い子だ。嬉しかったので浮かれた軽いスキップで、機嫌よく裏門から帰宅した。
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「侑士、誰だよ?」
「伊丹さんていう、今日転校してきた子。関西から来てんて」
「ふーん、チビだな」
浮かれた女生徒の背を見ながら、ぽーんと跳ねさせたボールを岳人が壁に打つ。忍足もそれに続いた。終業後の部活時間。彼らの本番はこれからだ。