ぱちくりと見上げるエメラルドグリーンの瞳にふわふわの短い黒髪。自分のあとをぴよぴよひよこのように付いてきていた……愛らしさの絶頂である幼少期の妹の姿に面食らって、同時に懐かしさが込み上げてくる。
幼児はきょろきょろと何かを探すような仕草のあと、目の前の人物が自分の兄であると本能で気付いたのか、戸惑いがちに俺に近付いてきた。

「じょーくん、ママは?」
「……お袋は今いねぇ」
「……ママ……」
「(あぁそんな名前で呼ばれてたな、確か……)」

不安から涙が浮かび始めた昭子を焦りを顔に出さず抱き上げる。子供というものは親が動揺を見せると余計に不安になるものだ。頭を撫でるとしばらく身を固くしていた昭子はしだいに落ち着きを取り戻し、自分の学生服に気持ちよさそうに頬を寄せた。

後ろでジジイがやたらめったら写真を撮るのを一喝して追い出そうとすると、笑顔でカメラを渡された。孫馬鹿め。


「……んー」
「こら寝るな、やることがあんだろ」
「?」
「食べたら磨く」
「あ!やくそくげんまん!」
「おら、洗面所はあっちだ」

洗面台まで持ち上げてやりながら、歯ブラシに翻弄される昭子をぼんやりと目に焼き付ける。しかし、こんなに苦戦していてはいまいち磨けていないだろう。最後に親が仕上げをするんだろうか?このくらいの子供だと。

「できたー」
「……あー」
「あーーっ」
「できてねぇ。こっちこい」
「あい」

口を開かせれば案の定細かい所が磨けていない。膝の上に頭を乗せ、小さな口の中を丁寧に洗っていく。ふと昔見た教育テレビの「仕上げはおかーあさーん」という歌が頭の中を駆け巡った。
昭子はがらがらぺっと水を吐き出した後、白い歯を見せて満足げに笑った。

「しゅわ」
「あ?」
「しゅわー!」
「……子供ってたまに別世界の話するな」

こっくりと船をこぎだした昭子をベッドに寝かせてまた頭を撫でる。
敵のスタンド能力……子供に戻してしまうとは考えたものだ。そうして抵抗できなくなった昭子をDIOの元へ連れ去ろうという腹だったのだろう。こんないたいけな子供が奴にどうにかされていたかと思うと腸が煮えくり返りそうだ。

もう少しでスタンドは解けてしまうが、それまでの間くらい、久しぶりに妹を甘やかしてもいいだろう。
パシャリと一枚だけ写真を撮ってカメラを机に置いた。


歯磨きの天使


「こら、指吸うんじゃねぇ」
「?」
「……ば、……ばっちいから、めっ」
「はぁい」





承太郎さんに幼児語で怒られたいという願望が抑えきれなかった



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