内股を伝う粘液が、白い脚をゆっくり汚していく。女は足首まで達したそれを見送った後、未だ夢中で柔肌を貪る男の逞しい背中を力無く叩いた。
もう限界、の合図である。

名残惜しげに鎖骨へキスを落とす赤い唇が、存外満足そうに弧を描く。昭子は思わずおやと思った。

「ンー……今日は中々もったでは無いか」
「ん、」


その月の光に浮かび上がる美貌たるや、人ならざるものに相応しく壮絶であった。DIOは、もちろん人ではない。100年以上生き続けてなお精力に満ち満ちた吸血鬼の相手をするには、女はあまりに脆弱であった。
女―――いや少女と言っても差し支えのない、若くいたいけな彼女。昭子は年齢にしてDIOの6分の1すら生きていないのであるから、あらゆる面で男を満足させるのは至難の業である。

それでも尚2人を繋ぐものは紛れもなく情愛であったし、行為に慣れていない昭子がだんだんと開拓されていく様はDIOをこの上無く満たしていた。最初こそ抵抗の末に失神と合意の上であるのに後味の悪い結果になったりしたが、今では回数をこなしても限界を伝える余裕くらいは持てるようになった。

そして男の満足そうな顔をみる限り、今回は最高記録を更新したらしい。


「立てる、わけがないか。どれ、この私が直々にシャワー室まで運んでやろう」
「……うん」
「……ぐ、可愛い奴め」


行為が過ぎると昭子は普段の不遜さがどこかに飛んでいったように素直になるので、DIOは毎回扱いに困ってやけに甘い態度をとってしまう。
本人にすれば抵抗するだけの気力が無いだけで、出来ればさっさと意識の方を飛ばしたいところだが、まるで小動物を扱うかのようならしくない手つきは眠りに落ちてしまうのが惜しい気がする。
やたらと真剣なDIOが笑いを誘うというのもあって、昭子はむしろこちらの方が楽しみだった。
……そんなことを言うとへそを曲げるのが目に見えているので、口に出したりはしないが。



清潔なバスルームにお洒落な猫足のバスタブ。中はベビーピンクの泡風呂になっている。柔らかな泡の中にゆっくりと身体を沈ませれば、昭子はすっかりお姫様気分になった。
目を閉じてリラックスしている様子に締まりのない顔だと笑いながら、DIOはきめ細かい泡を手に取って彼女の体を洗っていく。泡越しでも感じられるすべすべの肌に、彼はさらに上機嫌になった。

鼻歌でも歌いそうだ、と昭子はほんの少し口角を上げた。ふと顔をあげたDIOが驚いているのがまた笑いを誘い、ついにくすくすと笑い出す。

「……何を笑っている」
「なぁんにも無いよ」
「そんな筈は……」

DIOが訝るのも無理はない。こんなにあからさまに機嫌のいい昭子は珍しい。心を通わせた今もいくら愛を囁いたところで眉一つ動かさないくせに、よくわからない所で笑みを零すものだからDIOは面白くないのだ。まるで自分が手玉に取られているようではないか!

悔しさを滲ませて歯を見せるその口元を益々楽しげに細い指がなぞると彼は途端に何も言えなくなってしまった。ん、と促すように閉じられた瞳。DIOは観念するしか無かった。

噛みつきそうな顔で、とろけるようなキス。

「今、幸せな感じなの。できればこのまま優しいDIOとシーツに包まれたいなぁ、なんて」
「……ッ」
「思うんだけど、どう?」
「このDIOを顎で使うとは、大したことだな、昭子!」
「人聞きの悪いこと言わないでよ……ね、お願い」


"まるで手玉にとられているような"その行為を拒めない、DIOの負けはとうの昔に決まっているのだ。



形勢逆転を夢見る
(惚れた弱みというものは厄介なもので)





イタリアに逃亡した新婚夫婦



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