焦げるまで焦らして


『ンっふぅ…あっ、あっ、っやだぁあ…! ひっぁんっんんっそ、こぉ…ッあっ』

「晴。今から俺達呑みに行くんだよ、お前もどーだ?」
「あー。スミマセン。用事がありまして」
「付き合い悪いなー」
「何とでも言って下さい」

『ふぅう…ッあ、あぁ…っく、ゃだ…っあ、あっあっ、ぃくぅうう…!』

「あれ? なんかご機嫌っぽいね」
「判ります? 実は部屋に取っておきの楽しみが待ってまして」
「へええ? ……あ、そうだ晴、藍原指揮官何処か知らない?」
「さあ、生憎」

『ッる…はるぅ…ぁんっ、ゃく…早くぅ…ッぇって、来てぇええ…!』



「ココをこんなにぐちゃぐちゃにして。一から躾け直して欲しいのか、伊織は?」
「ンふっ…は、る…?」
「ただいま」
「ん…っ待って、た…!」

 片耳に突っ込んでいたイヤホンと眼前の唇から、全く同時に同じ台詞が聞こえる。
 俺ははしたない恋人の痴態を盗み聞きする為のイヤホンを外して、発信機ごと適当にそこら辺に放り投げた。

 それにしても、やらしー格好。
 白いシャツから覗く乳首は真っ赤に腫れて虐めて貰いたそうにしてるし、口の端から伝い落ちる唾液がフローリングや自分の身体をべたべたに濡らしてるし。とろんと蕩けきった俺を見上げる黒色の双眸も、頭上でひと纏めに拘束された手首も、いちいち俺の股間を刺激する。
 極めつけは下半身。M字開脚してみせる付け根では今もヴヴヴとバイブがナカをトロトロに解していて、いやらしいとしか言いようのない程に白濁で汚れまくってた。間違いなく五回はイッたな、こいつ。

「はぁっ…お願い、触ってぇ…」

 なのに、俺の仕事中散々玩具に遊んで貰ってたくせに、そうやって腰を振って催促してくる。
 自然と口角が持ち上がるのが判った。

「何処を、どんな風に?」
「んっ…俺の、勃ち上がってる乳首、とか、ぁっん、前とか、後ろとか…ぐちゃぐちゃに…ぃッあ!」
「答えになってない。ほら、やり直し」

 もっと卑猥な言葉で誘えよ。
 俺もお前も、理性が吹き飛ぶくらいの強烈なやつで。
 屈み込んで奥深くまで咥えた紫色のバイブのスイッチを不規則に入れたり切ったり抜いたり挿したりする。

ぐちゅっ、ぬち、っちゃぁ、

「ひぁぅッんっぁあっそれっ、だめっ…ぁんっだめぇッ!」
「止めて欲しいならとっとと言えって。良すぎてきついんだろ?」

 がくがくと事実辛そうに首を縦に動かしてるけど、伊織、正直相当ヨさそうにしか見えないぞ?
 粘着音を響かせながら美味しそうにそれなりのブツの玩具を頬張り、面白い程にびくびくと身体を揺らす伊織は、それでも健気に応えた。

「ぁあッん…! 淫乱な伊織の…っオチンポ、ぐちゃぐちゃに扱いてぇ…! ふぅっ、あっ、下の口も…っぱくぱく、も、欲しいぃいい…!」
「何が、欲しいんだよ」

 ジジ、と狂った様に腰を振りたくる伊織が気付かないようそっとスラックスのチャックを下げていく。
 不意に、焦点が合っているかも怪しい伊織の眼差しが俺とかち合った。焦らされ過ぎて辛そうに顔を顰めた瞬間、涙がつうと幾筋の跡を這って落ちる。

「晴のッ…晴の、ガチガチなオチンポ頂戴ッ! 俺のナカに欲し…っ淫乱けちゅまんこに突き刺してぇえッ!」
「ッ…全く」
「ひぃっぁん!」

 無意味に首を左右に振る伊織に構わず、バイブを引き抜いた。行き先も見ずに投げ捨てて、勤務中の時から準備万端に出来上がっていた性器で、

「はぁぁあんッ!」

 伊織を貫く。
 きつい締め付けに襲われたのと伊織が限界まで背中を反らしたのは一緒で、

「ぁっ…、ぃ、おり…っ」
「ィク…ッ出る出るぅっ出ちゃ、ぃやぁぁあ――ッ!!」

 尾を引く絶叫と共に、伊織が射精した。
 中々波が引かない様で、数回に亘り吐き出して尚びくっびくっと全身を揺らす。壁に凭れた上半身に殆ど力は入っていない。
 俺がいつも焦らしに焦らすからか、それとも伊織に耐え性が無いのか、二回に一回は挿入しただけで伊織は放埒する。
 まあそれもサドっ気のある俺としては、見ていて愉悦に浸れるから良いけど。

「ぅっん…はぁっ、は、る…ッ」

 尤も、受け入れる側にとっちゃ死活問題以外の何物でもない。

「ん…ごめん伊織、動くぞ」
「ぁっ…少しだけ、待っ…!」
「待てない」

 これでもある程度はお前の痙攣が収まるまで我慢していたんだっつうの。
 待機中に解いてやった手錠を脇に置いて、伊織の両腕を俺の首に回してやる。依然脱力している相手にがっつく事に躊躇いが無いわけじゃないけど、ごめん、やっぱ限界。

「ふぁっ、ちょ、ぃきなり速ぃい…!」
「お前だけっ、先に四時間も愉しんでるだろうが! あんあん鳴いてる声聴いててやばかったんだって、俺も!」
「そんな…ッ勝手に盗み聞いてたのは、お前…っぁふ、ぅん…だろ、が!」

 反論のしようも御座いません。
 冷静に自分にツッコミを入れる俺の声を無視して、抽挿を繰り返す。

「たの…ッ頼むからぁ…っスピ、ド…落としてぇっん!」
「努力っ、するだけする!」

 対面座位に近い体勢だと耳元を伊織の批難じみた気持ち良さげな嬌声が掠めて、理性を取り戻そうにも何処にも見当たらない状態にさせられる。
 ほんと、俺も大概、こいつに夢中だな。

「はるっ…はるぅぁっん、はるッ!」
「ン…」

 やたらと名前を呼び始めたら、『キスして』の合図。
 妙なところで素直じゃない恋人の後頭部に手を添え、がむしゃらに舌を吸った。伊織も俺かそれ以上に必死に求めてくる。
 伊織の唾液を飲んで、俺の唾液を飲ませてやる。

「ぁっンん…はるっ、もう…ぁっはる!」
「んー…イキそうか?」

 そろそろかなと思っていたら、案の定背中に爪を立てて伊織が切羽詰まった様に叫んだ。問い掛けにこくこく、と頷く。
 その素直さに免じて、ご褒美をあげないとな。
 片足を支えていた手を中心に移動させる。

「ぁんッ!」
「はっ…気持ち良さそー」
「あんっあんっ…ンぁぅっ! あ! ぁあ…ッイイ、よぉ…っ!」

 くちゅくちゅといやらしく可愛らしいおちんちんを扱いてやれば、髪を振り乱して鳴いてみせた。俺にも毛先がぶつかるが、逆にそれは興奮を煽る材料となる。

ぬちゅ、ぐち、くちゃくちゃっ、ぺちゅ

 室内が激しい水音で満ちる。頭ン中が沸騰しそうなくらい、伊織のナカを穿つ事しか考えられない。
 涙とか唾液とか飛び散った精液とかで汚い顔で、伊織は言う。

「ふぁあっ…ィくぅうッあっイクっ、ゃだっやだぁっんン!」
「何が嫌だよ、お前のココはイキたいって泣いてるぜ?」
「ぁんっぃやぁっだめっらめぇっンっあ、はる、とッ…が、」
「…俺、とが?」

 迂闊にも伊織の顔を覗き込んでしまった。
 後で回想しただけで一発抜けそうにイヤラシイ蕩けた表情の伊織が、俺の名を囁く。

「晴と…ッいっしょが、ぃいっからぁ…!」
「ッ…馬鹿、が…!」
「ひぁっ!? なん…っおっき、あっ、あっあんっあんっ、――ッ!!」

 俺は思い切り奥歯を噛んで、伊織は俺にしがみつきながら最早声も無く、同時に達した。
 可愛い事言われた途端にアレが爆発してしまったのは、不徳の致すところだ。







「……これ、第五会議室に運べ」
「はい」
「こっちも片付け終わった。九条へ持って行け」
「はい」
「…………一之瀬」
「はい?」

 名前を呼ばれたので、書類を整理する手を止めて顔を上げる。
 この上ない仏頂面の恋人は、辛うじて聞き取れる声量でぼそっと呟いた。

「……腰、痛い」
「はいはい。行き先はどちらで?」
「総、司令部」
「背負われますか? 肩を借りますか?」
「だっ…」

「「誰の所為だと思っている!」」

「……!!」
「はは。せいかーい」
「いっぺん死ね、晴!」
「死ねぇ? …またお仕置きされたいの、伊織?」
「くぅ…ッ」



Fin.



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