(久々知と次屋)
「待ちなさい」
萌黄の装束が視界の隅を掠めた。
ふらふらと歩く彼は学園から出ようとしている。
このままだとまずいんじゃないか?
そう思って手を伸ばし彼の腕をとった。
「何処に行くつもりだ次屋、そっちは学園の外だぞ?」
「…あ、久々知先輩」
少し、空があまりにも綺麗だったので。
ふわりと、普段あまり表情の変わらない彼が笑う。
「空、」
「はい、空」
促されるままに仰ぐと、澄んだ水色。
「学園から見ていればいいだろう」
「そのつもりですよ」
「…だから、お前は外に出ようとしていたと…」
嗚呼、それはきっと空を見ながら歩いていたからでしょう。
焦がれるように伸ばした彼の手は、空虚を掴み落ちる。
困ったように眉を下げて、
「精一杯、どれだけの時間こうやって手を伸ばしていても掴めない」
その内腕が段々と痛くなってくるんです。
悲しそうに言う次屋は、もしかしたら先にはもう暗闇しかないことを悟っているのだろうか。
飛べない鳥は空に焦がれる。
私達忍は何に焦がれるのだろう。
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