暗闇に消える

「――そろそろ死ぬことくらい、自分ではちゃんとわかってるって。だってよ、飯も食えねーし、水は飲めねー、殺戮だって出来やしねーし、それに超苦しいんだよ。なんかぼーっとするしよ、そりゃあ死ぬよなあ、ったく。
 不死のオレが死んじまうことになるなんてよ、笑えるよなァ、角都。どうせなら殺してほしいぜ、なんて冗談みたいに言ってたのにほんとに死んじまうなんてな。しかもバラバラにして生き埋めにされる、なんて死に方とは、オレだって全く考えてなかったわけよ。……あーあァ、超痛かったなァ、あれ……信じらんねーくらい痛かった。首切られたりなんてのはお前にも他の賞金首にもよくされたけどよ、あそこまでバラバラにされるなんて初だったからよ。びっくりしたぜ、ったく。……そもそも死ぬとか思ってなかったんだけどよ。まあそこは置いといてくれって。
 ん? 死ぬのが怖くないか……うーん……最初はなんか怖かったぜ。ちょっとな、う
ん。あ、今のデイダラちゃんっぽいな、うん。デイダラちゃんもどうしてんのかね。……ああ、死ぬの、な。死ぬ気なんて毛頭なかったからさ、そりゃあはじめは混乱くらいしたって。なんたってオレは不死身だからな! 今はちげーらしいけどよ。……だってさァ、ジャシン様に祈りを捧げようにも、手がどっか行っちまってるし……殺戮なんてもっとできねーし……やっぱり腹は減るし……寝ようにも痛ェしよ……それに、角都ちゃんはいつまでたっても助けに来てくんねーしよォ。穴を掘り起こして、オレのことを引きずり出して、悪態つきながらまた縫ってくれるだろ、とか思ってたんだよ。今考えっと、オレけっこう長く待ってたぜ? ……まあわかってるって。角都は死んじまったんだろ? オレより先にさ。
 はじめはわかってなかったんだよ、角都が死んだって。あいつに埋められてから少しの間は、まあすぐに助けに来るだろって思ってたわけよ。んで、それからまた少し経って、もしかして角都のヤロー、アルバイトでもやっててまだ助けに来ねーつもりだな、とか考えてさ。あの性悪! ジャシン様に裁かれるぞ! ってな。なんたってオレはジャシン教一番の……でもずっと長い間待って、待ち続けて、目が暗いのにもすっかり慣れて、アホみたいに腹が減って、ジャシン様のために狂ったみたいに殺戮したくなってこの土の中でバタバタ暴れようとした頃、もう埋められてからどれくらい経ったかなんてわかんねーけど、その時思ったんだよ。もしかして、もう死んでるから来ないんじゃないかって。そう考えたら全部納得がいくわけだ。角都はあの性格だけどよ、意外とそこまで悪い奴じゃねーしさ。生きてたら助けに来てくれるだろ。……生きてたら、な。
 あーあァ、オレたち不死コンビ、ってのがウリだったのによォ、死んじまうなんてざまあねえよなァ。しかもあの角都が先に。あんなに何度もオレのことを殺した角都がだよ、心臓五つもあるらしい角都が、オレより先にやられちまうとはな。あいつ、認めるのは癪だけどけっこう強かったのになァ、人生何が起こるかわからねえってやつかね。……ホント、わかんねえなァ……。……オレさァ、不死身なオレがもし死ぬんなら、角都に殺されてあの世いき、と思ってたからよ。
 ……いや、ちげーな。死ぬなら角都に殺されたかった……の方が合ってる気がする。オレ、実は結構嬉しかったんだぜ? いつか殺してやる、っていうアレ。コンビ組んだ始めらへんはさ、アレ言われると超頭に血が上ってさァ、反抗して斬って刺して斬られて殺されて、なんて繰り返してたもんなのにさ、おかしいよな。今は嬉しいよ。角都がいつか殺してやる、って言うたんびに、オレ不死でよかったなんて思ったもんだ。だって角都、てめぇと一緒だしなァ。てめぇは一応死ねる体らしいけど。……まあほんとは一緒に死ねたら一番よかったけどよ、それはもう無理だしなァ……。ま、当たり前だけどよ。
 ……あ、なあ、オレたち暁の中では結構仲良かったほうだと思わねぇ? 殺し合ったりなんかもしたし、角都のアルバイトのことで喧嘩したりなんかもしたけどよ、暁の中では、やっぱりオレたちが一番だったと思うぜ。なんたって不死コンビだからなァ! ……これ初めて言ったとき、角都オレのこと睨んだよな。でもその後はなんも言わなくなったしよ、てめぇこれ気に入ってたんじゃねえの? まあ言わなくていいぜ。また今度聞くからよ……。
 ……死んでるから会えない……なあ……。……オレはジャシン教の一番の信徒だからな、本当はそれ相応の場所に行くんだろうが……特別に角都、てめぇと同じところに行ってやるよ。……てめぇのことだから、地獄にでも行ってるだろうな。じゃあオレも地獄でよ、鬼退治でもして、ジャシン様のためにまた殺戮でもするからよ、そうしたら、またオレと組もうぜ。退屈させねーからよ。
 ……なあ角都、オレ本当は、てめぇみたいに、殺したかったのかもな。てめぇのことを、さ。……ゲハハハハ! 心中じゃねーんだから、……。
 ………………なあ、オレ、てめぇのこと、結構、好きだった、ぜ………………
 ……………………………………………………………………」


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