グラン・ブルー | ナノ

グラン・ブルー

 蒼よりも深く、闇よりも優しい。深海の孤独は、音もなく痛みに寄り添い、同時に誰にも無関心だ。だからこそ、この海になりたい。寄せては引く波、留まれない場所。水面も見えない海の底、闇に身を横たえて静寂の中、涙は空へと昇って行く。

 人の死が土へ還る事だと言うのなら、この体が消滅するということが空気へと還る事なら良い。そして美しい空を廻り深い海の底へ堕ちていく。それが例え永遠の孤独だろうと構わない。輪郭も何もかもが曖昧な世界で記憶も意思も全てが泡沫のように空へと昇り消えて、世界の終わりまで……

 どこか乾いた笑い声が部屋の中に反響した。訝しげな目を向けたルークに部屋の主であるピオニーは笑いを噛み殺すように目を細め口へと手を当てる。自分の行為を咎めてではなく、苦々しく歪められた口許を隠すために

「子供とは随分可愛らしい発想をするものだ」

 笑われた事、若しくは子供と称された事が馬鹿にされていると思えたのだろう、ルークは恨めしそうな目をピオニーへ向け唇を噛んだ。考えなしだったと己の発言を恥じているようだった。

「俺が、何かを願うことなんて烏滸がましい事くらい分かってます。」
「まあそうムキになるな」

 今度こそ馬鹿にされたと言うのが分かるほどの投げ遣りとも取れるピオニーの言葉に少しもふざけたつもりは無かっただけに腹立たしくも思えたのか、それ以上に自身の愚かさにルークは言葉を濁すように口を閉ざした。

「ルーク、お前さんにグランブルーになられちゃ俺の立つ瀬がない」

 人は皆、人間臭さの中で逝くと言うのに罪に汚れた体で何故美しくいられる。まるで書き記された物語りのように現実味のない美しい最期を描く子供、その通りに逝ってしまいそうだと完全に否定できない気がしてやりきれない気持ちが喉元を詰まらせる。

「…グラン、ブルー…?」

 問うような目を向けてくるルークからピオニーは目を逸らすように深く椅子に座り直し窓の外の景色へと目をやる。何も言おうとしない男のその様子に続きを促す事もできず首を傾げるしかない。

 グランブルー“雄大な蒼”それはこの国の皇帝が最期に戴き背負うもの、ピオニーの父である先帝カールもまた先祖に倣いグランブルーとなった。この国の雄大な蒼き海になり、死すとも護国の象徴として生き続ける。自分ではない誰かのように語り継がれて

「お前が海の底、深海の孤独に堕ちていくと言うのなら俺はお前を引き上げる。お前が安寧を求めての言葉だったとしても、それは困る。」

 この国のグランブルーは皇帝でなければならない。人々の関心が他人に持っていかれては困るのだ。けれど、本当はそんなことなどどうだっていい。
 きっと戻らぬこの哀しい子供を一人きりになどしたくはなかった。

 それが子供の安息になるのだとしても、この手に届くならば嫌がるその手を取るだろう。彼のためだけに伸ばすことの出来ない手。もし届かなかったその時は

 雄大な蒼となって

2012/06/04
ンダコレ…(´・A・`)
書きたいことがあったはずなのに、脱線して見失いました。

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