かち、かち、かち。
霧に包まれた街なかで、硝子が触れ合う小さな音が存在していた。それはなにかを導くかのような、どこか繊細であり、しかしながら力強い意志のようなものも感ぜられる。
「引け目に感じなくてもいいの」
少女は溜め息を吐いた。ぐったりと項垂れて自身の足元に視線を落とす。
少女には或る目的があったのだ。それはとても重要で、かつ救済でもある物語である。
「行かなくちゃ」
少女は頬を濡らす涙を手で拭うと、なにかを決心した面持ちで歩き出した。
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