※牧野慶の性格がおかしいです

「ジャガーが燃えるような気がします……」
「……誰の」
「み、宮田先生のが……」
「なに?」
「あ、あくまでなんとなく、です!」
「……」
「こんにちは、なまえちゃん」
「牧野さん!」
「チッ……邪魔者が現れましたね」
「露骨に嫌な顔をしないでいただけませんか?」
「……の割には気色の悪い笑顔を貼りつけてますよ」
「おや、ただ微笑んでいるだけだというのに、本当宮田さんは心の狭いお方ですね。ねえ、なまえちゃん?」
「(牧野さんの言動もなかなかこわいよ……)な、なんとも言えないです……」
「俺は行きますよ。こんな状況じゃ立ち止まっても無意味だろうからな」
「わ、わたしもついていってもいいですか……?」
「元よりそのつもりです」
「わあ! ありが───」
「ちょっと待ってください!」
「チッ」
「なまえちゃん、宮田さんと同行はしない方がいいですよ」
「え、どうしてですか?」
「宮田さんにヒトを気遣う能力はありませんから」
「ハ?」
「そのぶん私は、なまえちゃんに寄り添うことができます。いかがでしょう?」
「え、え……寄り添われて、それからどうなるんですか……?」
「化け物になってお終い、となるでしょうね。牧野さんに化け物と対峙する能力は皆無ですから」
「ぐぬぬ……」
「行きましょう。そこ、足場が悪いので気をつけて」
「! あ、ありがとうございます!」
「これ見よがしに! 去ろうと!! しないでください!!!」
「ひ」
「黙れ煩わしい」
「黙りません。宮田さんを看取るまでは」
「看取、る……?」
「俺よりも先に牧野さんの方が早くくたばる運命にあるので、それは叶いませんよ」
「未だわからないでしょう? これからなにが起こるのかなんて、普通はわかるはずがないのです」
「(そろそろ止めた方がいいのかな……)」
「……貴方は何度殺されれば諦めるんだ」
「……?」
「私はいつだって真摯に向き合ってきました。自分のやるべきことを片時も忘れずに。わかりますか、邪魔なのは宮田さんの方だと」
「俺がいなければ苦しむ奴らが増えるだけですよ」
「……?(物音が聞こえる……?)」
「宮田さんは私の価値をてんで理解していませんね」
「理解する必要性がありませんから」
「……!? わ、わー!!」
「ッなまえ!?」
「なまえちゃん!」
「ひ、ひっ、離して!」
「フンッ」
「オラア!」
「た、たすかりました、ありがとうございます……」
「……牧野さん」
「ほら、役に立ったでしょう?」
「と、ところで牧野さん、野太い声も出せたんですね……」
「こんな私は嫌いですか……?」
「そんなことないです。頼りになるのは素敵です!」
「……! (ハア、なまえちゃんは今日もかわいいなア……)」
「黙れ」
「痛ッ! なにも言ってないじゃないですか!」
「心の声がダダ漏れなんですよ貴方は」
「あ、あの、宮田先生、牧野さん、そろそろ進まないと化け物が寄ってきちゃいますよ」
「そうだな。行こう」
「はい!」
「……」
「痛ッ! どうして蹴るんです!?」
「なに我が物顔でついてこようとするんですか」
「だ、だって私も役に立てるのに!?」
「……」
「み、宮田先生、落ち着いてください。これから力仕事があるかもですし、キット仲間は多い方が安全ですよ!」
「……ふん」
「ようやく理解していただけましたか」
「なにか不測の事態に見舞われそうになったら、そのときは頼みます」
「ええ、勿論。なまえちゃんは私が守ります」
「囮くらいには使えるでしょう」
「お、おとり!?」
「何か問題でも?」
「……」
「宮田先生……牧野さんも、はやく行きましょう」
「……」
「……」
「(気まずいなあ……)」

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