「……え?ごめんナマエお姉さん、今なんて言った?」

両手で顔を覆いながらワンワン泣いている最中に質問を投げかけるのは申し訳ないとは思うけど、それよりもぼくは耳を疑う言葉をどうにかして飲み込みたいという気持ちが勝り、ナマエお姉さんの身に起こった悲劇を心の中で十分に憐れみながらそう言っていた。嗚咽を漏らす口からはハッキリと形を持った言葉なんて紡がれるわけがなく、辛うじて聞き取れた単語と言えばパンツと破られた、ってことくらいだ。その二つの単語だけでぼくの頭にはナマエお姉さんがどんな目にあったか、その光景がやけに鮮やかに浮かんだ。正直予想はついていた。だからあの時言ったのに。
でもだからと言って、まさかこんなにも予想が的中するとは思わなかった。だってあいつもナマエお姉さんが嫌がるのは分かりきっているはずだし。強行突破するだなんて、そんなところから垣間見えるのはクリーチャーらしくない。人間みたいな一面もあるものだ。

「うええ、ひっう、うぅ」
「いい加減泣き止んでくれないかなぁ」
「だ、だっでぇ……うわあああん」

ナマエお姉さんは膝を抱えて縮こまっているので、立っているぼくよりも位置が低い所に頭がある。さすがにここまで泣かれてしまうとぼくも同情する。よしよしと頭をなでてみても泣き止んでくれる様子は一向にないけど、突然勢いよく立ち上がったと思いきや抱き付いてきたから役得だと思わずにはいられない。ぼくよりもナマエお姉さんの方が身長が高いのが残念だ。もう少し成長してから死んだ方が嬉しかったな。もっと大きな体を持っていれば、なんて考えながら、ぼくはナマエお姉さんの背中をゆっくりと上下に摩っていた。

- ナノ -