今朝起きて真っ先に俺のテンションを上げてくれたのは星座占いだった。その性格でと同僚からは意外に思われているらしいが、俺は結構占いだとか、そういった神秘的な、占星術的なものが好きなのである。今日は一位、昨日は二位。こりゃ何かしらイイコトが起こりそうな予感しかない。とは言っても、今日も今日とてサイレントヒルをぐるぐる徘徊するような業務内容に変わりはなく、そればっかりは諦めるしかない既成事実であった。
「……おっ、あれは…」
そう考えていた矢先、さっそく俺の身に嬉しい事が起こった。薄暗い通路の向こう側に見える、辺りをキョロキョロと見渡す小さな背中。短い制服のスカートから覗くのは、暗闇にはよく映える白い生足。あれは、そう。実にカワイソウな事に、このサイレントヒルに囚われて帰れなくなってしまった少女。しかもノーパンという特殊な性癖を持っている奴。
「おいお前」
「ひいっ!」
肩を叩いて声をかけると、そいつはビクウッと身体を揺らし、凄い勢いで振り返った。ガスマスク越しからこちらを見つめる双眸には、随分と水分が含まれている。いやそんな大声でもなかったんだが。「……あ、あなたはいつぞやの、ガスマスクさん」震える声でそう話したノーパン少女は、俺を恨めし気な瞳で睨み上げてきた。
「わたしになにか、ご用ですか…?」
細い両腕で自身の身体を抱きすくめながら、そいつは俺からじりじりと距離を取っていった。誰が見ても嫌われているような、そんな空気。何故かは知らんが面白くない。
「は?何でそんな離れるんだよ」
「……だって、ガスマスクさん性格悪いんだもの…」
「なあ待てって、」
「やっ、やだあはなしてようわあああんあああああん」
わんわん泣き出したノーパン少女の声が廊下に響く。こいつはあのレッドピラミッドシングのお気に入りという存在で、この状況が奴に見つかったら俺は死ぬ。絶対死ぬ。まずこの泣き喚く声をどうにかしなければ。俺はノーパン少女の口を手で塞いだ。防護服越しに涙が止めどなく滴り落ちてくる。
……いやマジで、堰を切ったように泣くいい手本だよなあ。俺は心のどこかで、そんなノーパン少女に関心していた。