赤くて黒い世界になった後、わたしの後ろにはいつの間にか三角さんが立っていた。わたしよりぐうんと大きな身長をしている彼を見あげているあいだも涙が止まらず、わたしの目からはポタポタと雫がしたたり落ちている。「さ、さんかくさ、」しゃくりあがる肩のせいでうまく喋れない。そんなわたしの目元を、三角さんは優しくぬぐってくれた。しょっぱい水分が彼の指に移ってきらきらしている。

「わたし、かえれないよ」

どうしたらいいですか?今までわたしのことを助けてくれた三角さんなら、どうにかできませんか?頬にそえられた大きな手に、対照的なわたしの手をよせる。すると三角さんはピクリと反応を示した。一瞬動きを止めたように見えたけれど、すぐに絡めあうようにしてわたしの手を取って、サイレントヒルの方へ引っ張っていく。

「また、あの建物に行くの?」

コクリ、三角さんは頷いた。そうか、じゃあわたしはサイレントヒルに行けば助かるんだね。三角さんがそう言うのだから、きっと……ううん、絶対正しいに決まっている。だって三角さんは、いつもわたしのことを助けてくれるのだから。

いつの間にか、涙は止まっていた。

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