帰路につく頃には既に日は暮れ、辺りは闇に包まれていた。家に行くには外灯が多いとはいえない一本道しかなく、頬を撫でる冷たい空気により一層恐怖心が煽られる。ナマエは一刻も早く家に帰りたかった。学校が終わってから教室で眠りこけていた数十分前の自分を恨む。あんなことをしなければ、こんな思い───不審者につけられるという思いをしなくて済んだはずなのに。
相手はナマエとの距離を縮めるわけでもなく走って追いかけてくるわけでもない。しかし一定の間隔を保ったままついてくる様子は気味が悪い上に、何よりも背中に突き刺さんばかりの視線が嫌らしい。まるでタイミングを計っているかのようなそれにぞわりと肌が粟立つ。

「悪気はないんだ許してくれ、こうするしか……」

ぼそぼそと早口にそう言った男は、いつの間にかナマエのすぐ後ろに立っている。まずいと思い走りだそうとしたときには既に遅く、ナマエは口元をハンカチで覆われそのまま意識を失った。

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