世界が完璧にかわったと、思った。さっきまでの雰囲気とは違う、恐ろしい空気をまとうあの赤黒い空間。寒いわけでもないのに体温がさがった気がした。

「…もう、なにがなんだか……」

ジョシュくんが沈んでいってしまったところを見つめてみるけれど、当然なにかがかわるわけでもない。……進まなければ。彼は急ぐべきだと、助言をくれたのだから。わたしに立ち止まっている時間はない。確かここの廊下を真っ直ぐに進んで、右?だったかな、あれ。左と言っていたっけ。……ちゃんと聞いていたはずなのに!ジョシュくんと周りの変化に気をとられて、実は話をよく聞いていなかっただなんて、笑えない。

「と、とにかく、…行くしかないよね」

わたしは両頬を叩いて気合をいれた。

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長い。その一言に尽きる。わたしが今歩いている廊下が、とても長い。曲がり角なんて一向に見える気配がなくて、そもそもジョシュくんはこっちを指示していたのか不安になってきた。妙に入り組んだ作りで、突然へんな生き物に襲われるよりはマシなのかな、なんて思うけれど、この単純な道のりが裏目に出てしまうこともきっとあるだろう。例えば後ろから、あるいは前から追いかけられたとする。逃げる場所も隠れる場所もない。

「そんなの、絶対死んじゃう……!」

嫌な想像をしてしまって、わたしの足は自然とはやくなる。真っ直ぐに進めばいつか曲がるところが見えてくる、というジョシュくんの言葉だけが、今のわたしの心の支えだった。

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