一つだけ、わかったことがある。それは三角頭はわたしをころそうとしているわけではないということだ。現に今さっき、かなり衝撃的にではあったけれど、わたしを化け物から助けてくれたのだから。

「……ええと」

どんな手段であれ、命を救われたことにかわりはない。お礼とか、言うべき、かな。さっきまでいつころされてしまうのか、とビクビク怯えていたのを申し訳なく思う。それに対する謝罪もした方がいいかもしれない。三角頭がそのことを気にしているかはわからないけれど、わたしは罪悪感でいっぱいだったのだ。

「あ、あの、……さっきは逃げてしまって、ごめんなさい。わたし、あなたにころされちゃうと思って……助けてくれて、どうもありがとう」

ぺこりとお辞儀をすると、頭に手を乗せられた。気にするなって言ってくれているように感じて、わたしは頭をあげる。
さて、これからまた出口探しに向かうわけなのだけれど、きっとまたあの看護師のような化け物が出てくるだろう。直感でそう思った。それだとわたし一人では、到底進めそうにない。そこで名案を思いついた。この三角頭に、一緒に行動してもらえばいいと!彼のムキムキに対抗できるやつは、おそらくいない……と思いたい。そうと決まれば交渉をしなければ。

「……三角さん、わたしと一緒にいてくれない?」

ああこれだと主旨がぬけてしまっている。この建物から出る手伝いをしてもらいたい、ということを伝えなければいけないのに。それをつけ足すために再度口を開いたら、身体が浮いた。

「ふぐう」

一瞬の浮遊感の後にはお腹にかたい感触。三角頭の肩だった。わたしはまるで米俵のように、彼に担がれていたのだ。あっ、ちょっと、これだと……!

「っみ、みえ!るっ!」

三角頭は遠慮なしに歩くものだから、お腹への撃力が半端なくて上手に話せない。加えて彼の肩は驚くほどかたいので、そこにわたしの体重も加わってなかなか痛い。いいや、そんなことはどうでもいい。問題は、この担がれ方だと前方からわたしの、は、恥ずかしいところが見えてしまうのだ!手をあてて必死に隠したりスカートを引っ張ったりしながら、三角頭にそのことを伝えようと頑張るけれど、どうもうまく喋られないから無理そうだ。なかば諦めて手で隠すことに専念すると、三角頭がわたしのお尻から太ももにかけてを、その大きな手でなでた。

……これ、絶対気づいているよね。

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