毎日、毎日。
ただ籠の外から庭を眺め、その日をただひたすら希う。
この庭の中心に開く筈の奇蹟を。

ある日の暁、夢を見た。
あの庭に、花園に、至高の華が咲く夢を。
目覚めると共に、それが現実である事を確信を持ち、衝動のままに庭へと走った。
閉ざされた籠の中に、其処に咲き誇る花々にも劣らず、それすらも凌駕する程の美しい華が生まれる。
あれほど待ち望んだ華が。
己の全てを捧げ、守るべき華が。
入ってはいけないと言われたその場所へ。
花園へ着くと、走った事によるものとは異なる心臓の早鐘が耳の奥に鳴り響く。
そして、初めてその籠の中へと踏み込んだ。
まるで花達に導かれるように、躊躇いなど何一つ持ち合わせてなど居なかった。


「・・・嗚呼、待っていたよ」


大きな花弁に抱かれるように、庭の中心で、赤子の様に膝を抱え眠っているそれが。
『花』では無い、人の姿形をしているそれが誰もが待ち望む至高の『華』である事を、誰に教わるとも無く、識っていた。


「君が『華』。古より守り続ける至高の『華』」


日の光を知らない白い肌、幽かな月光に照らされる髪は白銀に近い蒼。
見た目は自分と同じか、少し下の線の細い少年に見える。
そっと血の気が感じられないその頬に触れようとした瞬間、閉ざされていたその瞼がゆっくりと開かれる。
うっすらと開かれた瞳は琥珀色。


「・・・」


『華』は細い腕を立て、上半身を起き上がらせると、周囲を一周見渡し、首を傾げる。
その姿にふと微笑む。


「ずっと、僕は待っていたんだ」


多分、生まれる前からずっと。


「き、みは」
「彩都<さいと>。君を護る為に此処に居るんだ」









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