閉ざされた庭がある。
囲いに覆われ、まるで籠を連想させるその庭一面に広がる色彩豊かな花々は、何かを待ち望んでいるかの様に静かに佇む。
その籠とも言える花園へ、物心ついた頃、祖父に連れられ教えられた。
あまりに美しいその場所を見た瞬間に、初めて言葉を失う程に見惚れてしまった事を今でもはっきり覚えている。
茫然と花園を見惚れていると、厳格な祖父が重々しく口を開いた。


『籠の中には決して入ってはいけない。そこは至高の【華】が生まれる花園なのだ』


何百、何千年と受け継がれて来た種は、未だ芽吹く兆しを見せない。
だが、やがて芽吹かせ、其処に【華】は生まれる。
それを護る騎士の役目を我々はさだめられているのだ、と。
その言葉に、心は激しく脈打つ。
この花園の以上に美しい、至高の【華】。
祖父の言葉は脳裏に焼き付き、それから咲き誇る花達と共に、其処に生まれる何かを待ち望むように、それを見つめ続ける。
それを護り、護り抜く事が己の使命であると云うさだめ。
正しく運命がこの血に流れている。


『この花園を、この場所に咲く【華】を護る』


幼心に彩都は、強い決意を眼差しに宿したのであった。







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