「死は尊いものね」
ふいに何かの決め台詞の様に浮かんだ言葉。
似たような言葉なんて其処ら中に溢れている様な気はするけれど。
「また唐突だな」
「唐突?そんな事ないわ」
だって毎日、毎日。
飽きる事無く死について考えてる。
時に前向きに、時にどうしようもない戦慄を覚えながら、それを考える。
何故なら何を比べても、何が来ようとも何より比べられ無い程に怖いものであるのだから。
「唐突なんて言ったら明日にはそれは訪れるかもしれないし、何十年先に訪れるかもしれない」
そんな恐怖と常に背中合わせに生きていると云うのに何故人は恐る事を忘れてしまうのだろう。
そんな事を口にすると呆れたとでも言いたいのか、溜め息混じりに返答された。
「そりゃ何時死ぬかなんて分かる訳無いし、知りたくも無いだろうよ」
漫画やテレビの世界の様に輝かしい終焉を終える者も居れば、時に呆気無く、惨めに、孤独に去って行く者も居る。
「不平等なこの世界で、何よりも平等に与えられた終わり。何て尊いのかしら」
永遠の眠りの先。
行く涯は皆同じと云う。
「尊い死の先は何があるのかしらね」
「さてね、俺は薄ら寒さすら感じて、それ以上考えたくもないよ」
そして今日も考える。
『死』の意味を、そしてその先を。