古に、神は存在したと言う。
しかし、実際に見たと言う者の存在は何処にも居ない。


「結構、“カミサマ”なんて、弱い人間が縋るモノを求めて創った空想さ」
「全く、何で君はそんな夢を壊す様な事しか言わないかな」
「はっ、どうとでも言えばいい。俺は現実主義者なんでね。確証も無い言い伝えなんぞ信じる心持ち合わせてない」


問題は、証拠として確かに有る事。
自分自身の目で確認の出来ない事は全て拒絶をする勢いな程に、彼は空想話が嫌い。


「そんな事言ってると皆、旋登から離れて行くよ、私はそう預言する」


悪戯を思い着いたかの様に、自信を込めてそう宣告を告げる旋登の幼馴染み、兼、親友の泉。
その泉が言う言葉もまた鼻で一笑する。


「はぁ?それ位で離れて行く様な奴等なんて別に痛くも痒くもねぇよ」


どうせただ何となくの感覚で繋がった奴等。
望んで居て欲しいなどと言う感情など、生憎持ち合わせた事は無い。


「結局は依存だろ、何処かで自分を安心させたいと言う自分勝手な理屈で。カミサマに縋るのも同じことさ」


所詮、縋ったからと救いの導が差し示される訳でもあるまい。
そんな自己満足に浸る程に暇では無い。


「うわっ、冷たい。冷酷ってこう言う事を言うのかしら」
「馬鹿な事言ってないで、早く課題終わらせろよ、朝まで時間を掛ける気なのかお前は」
「そういう旋登はどうなのよ」
「俺と言う人間が、そんなに課題に時間を掛けるとでも思っているのか」
「じゃあ手伝ってよっ」
「泉、今まで助けてやった事があったと思うか」
「……………ぅ、思いません」


渋々、課題に手を動かし始めた泉。
ノートと睨めっこをしている泉に気付かれ無い様に旋登は笑う。
依存を否定しながら、彼もまた一つのものに依存をしている。
しかし、それは誰も知らない。
彼もそんな態度を見せない。


(だってカミサマは俺だけの“カミサマ”たからさ)


自分だけ知っていればいい。
自分だけ望んでいればいい。
他人は要らない。
彼女以外、誰も、何もいらない。





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