(君はまるで雑草の様だ)


誰が言ったかなんて覚えていない。
ただ、その目が憐れみや見下しを孕んでいるというのが漠然と記憶されている。
だからと言って、僕は悲観的になる訳でも、感傷的になる訳でも無く。
僕の脳裏にそう表現されたと言う事実が刻み込まれただけだ。
別段、不快に感じた訳では無いが、ふと思い出した。


「確かに」


気付いたら両親は居なくなった。
気付いたら友と言える存在は離れて行った。
気付いたら僕は一人になっていた。
誰も見向きもしない、無機質なコンクリートに根を付ける雑草の様に、其処に存在してもしなくても、どちらにしても、無意味な命の一つでしかないという。
実に的を得ている言葉であったと数年経った今、納得する。
ふと、道端に視線を落とす。
そこには、黄色に色付いた花が一輪。
ひっそりと、しかし太陽の光を浴びようと凛と佇むように咲いていた。
僕は、じっと花を見つめる。


(お前は何の為に蕾を開いた)


その一輪の花に、一日に何人の人間が気付くのか。
誰にも気付かれないままにただ散り急ぐというのか。
問いかけて何も返って来ない事は勿論理解している。
そして視線を正面に戻すと、此方に大きく手を振る一人の影を見つける。


「もう、遅いよ光軌」
「はいはい、悪うございました」
「誠意が感じないな、よし、昼飯は光軌のおごりで決定な」
「それだけは勘弁してくれよ煉」
「自業自得でしょー?あたしもうお腹減ってるのに我慢してたんだから」
「葵の腹の事情なんか知るか。せめてジュース一本にしてくれよ」
「分かったから。昼休みの時間が無くなる。行くぞ」
「はいはい」
「はい。は一回だって教わらなかった?」
「葵…、お前はおれの母親か何かか」
「何よー」


ただ孤独を受け入れ、ひっそりと呼吸を繰り返していたかつての僕。
しかし今は。
彼らと共に、広大な草原で堂々と咲く雑草達の様に真っ直ぐに太陽の光を浴びている。
例えそれが有り触れた日常であろうとも、僕にとっては大きな意味を持つ。
人はなんの為に生まれたのかと問う。
その答えはきっと誰も答えなど知る由も無い。
しかし、自分一人の事なら分かるような気がする。




(誰にも教えはしないけれども)








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