空は遠いと人は言う。
そもそも空と言うのは何処から何処までの事を言っているのだろう。
この地上から見える空に果てなど在りはしない。
では何処からが空と呼べるのだろうが。


「空を掴んでみたい」


ぼんやりとした秋の夕暮れ時。
紅みが広がる空を見上げながら呟く。
何気なく伸ばした手の平。
何も掴む事無く、ゆっくり握る。


「何を言ってるのさ、洸は」
「だから、俺は空を掴んでみたい。と言っただろ」
「そこじゃ無くて、空なら掴んでるじゃん?」
「へ?」


握った手の平を何度か開閉させてみるが、貴依の言ってる意味が理解出来ない。


「空なんてこの地面から離れた瞬間から始まってる。だから洸が握った其処はもう空の一部、て事」


貴依のその言葉に、さっき浮かんだ疑問が自分の中で解消されて行くようだった。
地面から離れた瞬間から其処は空。
果てなど人間の力では追う事は叶わない。
しかし、始まりは。
案外身近なモノなのだと気付かされた気がした。







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