凍てついた心はどちらであろうか。
彼女のものなのか、若しくは己自身か、それとも二人の心が永遠に溶けない氷の様に凍てついてしまったのかもしれない。
端から見れば穏やかな日常を送っている様に見えたとしても、しかし常に忠興の中に纏わり付くのは穏やかとはかけ離れた異常な愛しさと嫉妬心が渦巻く。
その根源は気高く美しい彼の妻である。
自己の心に掬う彼女への愛は消えず、はたから見れば狂気とも取れるであろう。
最早『愛』では無く『執着』に過ぎない事に気づいていてもその事実は認めない。


「お前はまるで蛇の様な女だ」


血臭が漂う中で淡々と、己の行為を非難する訳でも、恐る訳でも無く、其処にある感情は憐れみであるようだ。
そして冷酷とも取れるその瞳は、何も見ていない様で全てを捉える。


「鬼の女房に蛇はお似合いでしょう」


小さく呟く声音。
しかし、まるで毒を孕んだ牙が突き刺さったと思わせる程に鋭い。
艶やかに彩られた口元を僅かに吊り上げたその笑みは正に…―。





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