多分、気付いていたのだと想う。
誰よりも主君を敬い、誰よりも他人の幸せを願う程に優しい心を持つ父の心の深海が。
彼の苦悩が、嘆き、狂いそうな程に叫びを上げようとしていた事に。
「明智殿、明智光秀殿ご謀反!!」
屋敷の静寂が突如引き裂かれ、告げられた事実。
その言葉に自身の動揺を感じては居たが、心の底では何処か冷静な部分があった。
(とうとう、決められたのですね父上)
そして祈り願う。
神など所詮人間が創り上げた虚像だと信じている。
だが神が居るのであれば。
「どうか、父上をお守り下さいませ…」
過ちを正す為に、刃を振り上げた父の姿に想いを馳せる。