(改名前設定の為、宗茂→統虎の名前で統一)
初めて対面した時の事を思い出す。
第一印象は一言、最悪だった。
愛刀の千鳥により落雷を斬ったと云う伝説を持つ立花道雪様の、その剛胆さを引き継いだであろう負けん気の強い姫君。
「其なたが、高橋統虎殿か」
と品定めする様な視線を向けてくる“姫”と云うには似つかわしくない様に思える、立花ぎん千代。
7歳で早々に女ながら当主の座を受け継いだだけあると云う事なのか、自信に満ち溢れている表情に圧倒されそうになる。
だが、それを気取られない様に極力平静を保つ。
次の瞬間、姫から殺気を感じ、己の刀に手を延ばす。
同時に喉元には銀色に煌めく短刀が構えられていた。
「反応は先ず先ずだな。しかし、流石は高橋紹運殿のご子息であり、我が父、立花道雪が認めただけはあるか」
うっそりと笑うその顔は、妖艶さと云う事が似つかわしく、思わず見惚れてしまう。
すると突如、盛大な笑い声が響く。
「夫婦になる前に品定めか、流石、私の娘だ」
「当たり前ではございませんか父上。私の夫となる以上、軟弱な者に立花の当主となる資格などありませぬ」
「だが、其なたは気に入ったであろう」
その問い掛けに、妖しげな笑みを浮かべるだけで言葉で返す事は無かった。
「さて統虎殿は如何か、この野蛮姫に愛想を尽かしてなどおりませんかな」
道雪の問い掛けに、思わず笑みを溢す。
養父上にも野蛮姫とも揶揄される現、立花家女当主。
それに愛想を尽かすのか。
答えは否。
「面白い」
これから訪れる生活に彼は挑む様な気持ちを持ち、その瞳は強い光を宿していた。