敵は抹殺。
それが戦乱に生きる俺が掲げる信念。
今までもそれを違えた事は無く、違える積りも無い。
しかし、その信念を打ち砕く一人の男と出会った。
何度も挑みそして翻弄され続け、そして何度目かの時、不覚を突かれ捕獲されたてしまった。


(何と言う不覚を…)


そう思っても後の祭。
刻が流れるままに宿敵である、真田信繁との対面と相なった。
正面から見る信繁は温厚な性格が滲み出る笑みを浮かべ、姿勢を崩す様に座って居た。
己の想像との違いに、軽く唖然としてしまうが、信繁が口を開き、鎌之介は身を構える。


「其なたの名は」
「由利…鎌之介と申します」
「鎌之介か、その名が表す通り鎌を自在に操るそうだな」
「如何にも」


信繁は口元を緩ませ、顎を軽く撫でる仕草をする。
鎌之介はどんな事を考えているのかと想像し、どんな最悪な事を宣告されようとも、受け入れる心構えで、次に信繁が口を開く瞬間を待った。
長い沈黙、否、もしかしたらほんの数秒の事だったのかもしれないが、鎌之介は今の一秒でも長い時間に感じた。
次の瞬間、突然信繁が声を立てて笑い始めた。


「由利鎌之介」
「はっ」


名を呼ばれ覚悟を決め、静かに目を綴じる。
そして告げられた言葉は。

「其なた、私の配下に下る気は無いか?」
「………………は?」


その言葉に再び唖然とし、自分の耳を疑った。
今まで己を狙っていた敵を配下に下すとは、目の前に居るこの男は正気なのかと疑ってしまう。


「其なたは強い、そして私は其なたを気に入った。私の同士となりその力を発揮する積もりは無いか」
「……恐れながら」
「申してみろ」
「俺…いや、私は、貴方様の命を狙う敵の立場。捕らえられた今、膝を屈する事を承知したとしても、いづれまた貴方様の命を狙うとも分からないこの私を近くに置くと言うのですか」


疑問をぶつけてみると、信繁はまた盛大に声を立てて笑う。


「またそれは面白い。もしその鎌の先が私に向けられた時は、また何度でも迎え撃つ。そして私が敗北を感じた時、其なたの好きにするが良い」


自信に満ちた張りのある声。
傲慢さが満ちている様で、何処にも厭味が無い、彼から発される何かに自然に惹かれる気がした。
そして、鎌之介は決意を固めた。


「私、由利鎌之介は貴方様に膝を屈する事を受け入れましょう。しかし、私が貴方様に主の資格無しと見限る時、再び貴方様の命、戴きに上がります」


そして、結ばれた主従の関係。
不思議な空気を纏う今から仕える主の元で、飽きる事など無いのだろうと予感していた。






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