未だ迷っていた。
戦の戦火は広がり、押すも引くも今だ見えぬ戦場で布陣を敷き往く末を見守る。


(治部よ、勝てぬ戦だと知っていて何故戦を挑む)


秀秋には分からない。
ただ一つ思うのは、治部が抱く純真な亡き義父・秀吉への忠誠心の強さ。
それのみで動いているとでも言うのか。


「しかし、時代は変わる…確実に」


今や、次の天下人と誰もが口々に噂する家康殿の時代が刻一刻と迫って来ている。
秀秋とて、義父への恩は忘れている訳では無い。
だが、治部の様に時代の波に秀秋は逆らえない。
もうそれしか生き残る術は無い。
己の器はその程度である。
だからこそ早々に見離されたのだ、あの義父に。
思い返して自嘲気味に笑う。


(秀秋は、ただ生きたいのだ)


だから生きる為には手段など選びはしない。
それが逆賊として堕ちたとしても。






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