それは予期せぬ不足の事態であった。
否、無意識のうちに警鐘は聴こえていた、だが希望はまだ棄てずに願っていたと云うのが真実かもしれないと思う。
宣教師達の追放、弾圧。
そして切支丹には、主からの信仰の棄教を迫られる。
そんな事態に直面し、それぞれ戸惑いを隠せない。
その中に、行長も居た。
揺らぐ心に思考は混乱を起こしそうだ。


(どないすればええ?)


誰に問う訳でもなく、己自身に問いただす。
自己達の利益の為に切支丹になった様なもの、それ程篤く信仰心を持ち合わせていないと思っていた。


「高山様は、土地も何もかもを返上し、信仰を選んだそうだ」


風の噂で聞いた高山右近の決意。
彼に今までも何度も世話になり、信仰を説かれ、己が憧れを抱いた彼が。
地位も名誉も棄て、神の為に生きると云う。
主である秀吉への裏切り行為だと叫ぶ者も居る。
そして秀吉自身も衝撃を隠せず、怒りを顕にしていると聞く。


「相変わらず、俺は臆病者や…」


右近の姿に羨望を覚えつつ、主の怒りを恐れ動く事が出来ない自分に諦めと苛立ちが入り交じった感情が巡っている。
首元に飾られているクルスを握りしめ、静かに瞑目し、祈りを捧げる様に膝を折る。


(嗚呼、主よ。我の導を示さん事を)







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