ついに手にしたのは、誰もが欲した天下統一。
どれ程に願っていただろうか。
主君と認めた信長は、夢半ばで散り逝き、彼を追い詰めた光秀を己が力により討ち果たした。
そして反勢力と化した柴田を滅ぼし、幾つかの犠牲を払ってこの場に立つ。


「儂が、この日の本一に立った」


力も何も無かったあの頃、己の才能を自覚し、それを認めて下さる主君にも出会い、どんなに卑下され様と、憐れまれ様と、己の欲望を達成させる為にひれ伏し続けた。
今や、賛同、賞賛の声が彼方此方から聴こえてくる。
小気味良く喉を鳴らしながら零れた嗤い声は次第に部屋中に響く程に大きくなる。
富も地位も名誉も、必ず歴史に残る程の大事を為し遂げた。
しかし此だけでは満足などしない。
此れまでの自信と広がる己の欲望は際限無く広がり、更なる飛躍を求める。


(儂はまだやれる)


己の肥大化する夢想の脆さなど省みず、造り上げた頂点を徐々に崩壊させて行く事に気付かぬ理性。
栄光を手にした男は次第に己の妄言に囚われ、そして次第に壊れていった…―。





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