「闇の中から光へ願う」




羨ましかった…



ずっと、オレは羨ましかったんだ…



仲間に囲まれて、楽しそうにサッカーをする士朗が…



本当はオレだって、みんなと一緒にサッカーをしたい…



だけど、みんなはオレの事に気付いてはくれない…



みんなの目に映るのは“オレ”じゃなくて“吹雪士朗”で…



それは“オレ”じゃなくて…



分かってる…



分かってた…



オレはもう、死んでしまっていることも…



もう、サッカーが出来ないということも…



そんなこと、ずっと前から分かってた…



それでも士朗はオレに語りかけてくれた…



もう形のない“オレ”に、居場所を与えてくれた…



サッカーをやらせてくれた…



それでも、やっぱりこれは“オレ”じゃない…



“吹雪士朗”ではない、本当の“オレ”を見てほしい…



いつしかオレは、そんな風に考えるようになっていた…



だから、今まで支えであった士朗にきつく当たって、士朗を傷つけて…



そんなことは許されないと分かっていても、この思いを止めることは出来なくて…



二人で完璧になるという誓いを、オレは裏切ってしまった…



それでもオレは、ここに居たかった…



居場所が欲しかった…



オレはただ、みんなとサッカーがしたかった…



だから少しだけで良い…



お前の時間をオレにくれ…



オレにも、みんなとの時間を過ごさせてくれ…



その為にお前は、お前の中でしばらく眠りに就いてほしい…



オレが、“オレ”としての最期の願いを果たすまで…




『闇の中から光へ願う』
(少しだけで良い)
(オレにも光の時間(フィールド)を駆けさせてくれ)



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アツヤから士郎へ。
本音を言えない弟から兄への内なる願いの話。

実はアツヤは皆とサッカーをしたかっただけで、本当は士郎を傷付けたくはなかったのではないかと考え、思い浮かんだ捏造話。
きっとアツヤは皆と楽しそうにサッカーをしている士郎が羨ましかったのではないかと。
本当ならば、自分だってこの場に居たかもしれないのに、死という事象が永遠にそれを奪ってしまった…
けれども士郎は、アツヤに自分の時間を分け与えた…
だから、もしこれが士郎を傷付ける形になるとしても、それでも叶えたかった願いを兄の時間を借りて叶えようとしている…
それが彼の、最期の願いだから…



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