「snow pieces」


「あ、雪だ!」

少年は嬉しそうに叫ぶ。
空からは白い光。
微かな陽光を受け、それは煌きを放っている。
この北の地ではよく見られる、極めて一般的な光景だ。
しかし、このよく在る光景は、少年にとって、何度見ても幻想的で心魅かれるものだった。

「雪なんかでいちいち騒ぐなよ。お前は相変わらず子供だな。」

少年のすぐ隣から、別の少年の声が響く。

「えー。綺麗なものは綺麗だよ。」

少年は反論を唱える。
だって、好きなものは好きだから。
二人の少年は、たがいに顔を見合わせる。
二人の吐く息は、白い。
少年達は互いに笑い始めた。
理由は分からない。
ただ、妙に笑いが込み上げた。
二人の少年は、瓜二つの容姿をしている。
単に似ているというのではない。
少年達は全く同じ容姿を持つ。
彼らは双子なのだ。

「そろそろ部屋に入れ。風邪ひくぞ。」

少年は言う。

「うん。」

少年はそれに短く返し、部屋の窓を閉めた。




「雪だ。」

白い髪で、首にはマフラーを巻いた少年は、空から舞い降りた光を見、言った。
北国ではよく見られる、一般的な光景だ。

「ねぇ、アツヤ。今年も雪が降り始めたよ。」

少年は呟く。
しかし、その言葉への返答はない。
少年の隣には、誰もいない。

「………」

少年はぎゅっとマフラーを握り締める。

ねぇ、アツヤ…
また、今年も冬が来たよ…
いつもと同じ冬が…
でも…
もう、アツヤはいない…
もうみんな、いないんだ…

少年は目を閉じる。
瞼の裏には、今は亡き家族の姿。
もう戻らない、かけがえのない時間。

ねぇ、アツヤ…
もう僕達は会えないのかな…?
僕はずっと独り…?
そんなの嫌だよ…

少年は語り掛ける。
しかし、やはり返す者はいない。
雪ははらはらと舞い降り、少年の身体を濡らす。
次第に体温が奪われる。

『早く部屋に戻れ。風邪ひくぞ』

………っ!

少年ははっとして目を開く。
周囲には、誰もいない。
しかし、少年にはそこに何かがあるように思えた。
確かに声が聞こえた。
少年には、確証があった。

そうか…
ずっと…

「ここにいたんだね…」

呟いて、少年はマフラーを握る手の力を緩めた。




『snow pieces』
(あの雪の日の出来事は)
(今でも僕らを繋ぐ一欠片)



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旧拍手文。
掲載期間:10.1.17〜3.15



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