※当時の言葉とか知らね
※血迷った産物


「しっかりする」と田村麻呂が言ったが、どういう意味でだろうと綿麻呂は思った。
うだうだと考えてはみたもののあちらこちらに考えが飛んでいけない。
埒があかないので、不躾とは思いつつも聞いてみることにした。

「田村麻呂さまはご結婚なさらないのですか?」

結果行き着いたのがこれであったのだから、綿麻呂としては何も言えない。どうぞ罵ってください。
当の田村麻呂はポカンとした顔をしていた。

「どうかしたのか。急に結婚などと」
「あ、いえ、その以前しっかりするとおっしゃっていたので、身を固めるという意味かと思いまして……」

だんだん語尾が小さくなっていくのがわかったが混乱状態の頭ではそこまで気は回らなかった。
さらに田村麻呂はポカンとする。

「……忘れてください」

綿麻呂は今にも頭を抱えてうずくまってしまいたかった。顔は羞恥で真っ赤であろう。
鈴鹿御前がいなかったのが幸いであろうか。いたらろくなことにはなっていない。
俯いて自己嫌悪(激しい後悔)に陥っている綿麻呂を見、田村麻呂は呟いた。

「わしはお前がいいのだがな」

綿麻呂が「はい?」と聞き返してきたので田村麻呂は素知らぬふりを貫くことにした。


呟きを拾ったのは鷹の金星だけだった。


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