誰か変わってくれるなら今すぐこの場を譲りたい。
「……話を整理しよう」
ロイの執務室を移動して現在応接室。
ソファに腰掛けたロイは痛む頭を押さえながら言った。
向かい側にはアルフォンスとエドワード(中身はホークアイ)とホークアイ(中身はエドワード)が座っている。
「何らかの事情で中尉と鋼のの中身が入れ替わった、と。間違いないな?」
「おう」
「ええ」
すぐさま頷いた二人。ロイとアルフォンスは二人の違和感にげっそりしていた。イメージ破壊もいいところだ。
何だってこんなことになったのか、当事者含めわかっていないのがまた厄介だった。
「心当たりとかはないのか?」
ロイの質問にしばし考える二人。やがて(ここからは中身で表記する)エドワードがそうだ、と手を打った。
「昨日ハボック少尉に変な紙貰った。中尉が今は持ってるはず」
その中尉は君なんだがねとロイは疲れきった頭でぼんやりと思った。
「中尉……じゃなくて鋼の、ハボックを呼んでこい」
事情聴取だ、と後に続けられた言葉にエドワードは意地の悪い笑顔を浮かべた。ホークアイの顔だが中々様になっていた。
悪役も似合うんですね。
よく考えたら中身は常に悪役ぽかった。
エドワードが執務室を出て行くと、ロイとアルフォンスは盛大なため息をついた。正直気疲れなんてレベルの話ではなかった。
悪夢だった。
見たら永遠に忘れられなくなりそうな悪夢だった。
そして当のホークアイはいついれたのか、紅茶を優雅に啜っていた。
しばらくして扉がノックされる。のんびりとした「ハボックです」という声にロイは若干殺意がわいた。と、同時に憐れみも覚えた。
入れ、と言うとハボックが入ってきた。
後ろにはエドワード。
部屋を見回し、兄弟が揃っていることにハボックが少し怪訝そうな顔になる。
エドワードが後ろ手に扉を閉める。鍵をかけることも忘れない。
ロイは内心ハボックに合掌しながら口を開く。
「ハボック、お前を取り調べだ」
「はあ!?」
「あれをどう思う」
ロイはホークアイを指差し言う。
ハボックは首を傾げつつ
「どうって、大将ですよ」
と答える。
ロイは続けてエドワードを指差して同じことを聞く。
ハボックは同じようにホークアイだと答える。
「そうか……。ハボック、これから言うことは他言無用だ。言ったらお前の給料はなくなると思え」
「な、なんスか」
「……中尉と鋼のが入れ代わった」
「は?」
ロイは頭を抱えたいのを我慢しつつ、もう一度繰り返した。
それからホークアイが口を開く。
「少尉、昨日の書類は終わりましたか?」
エドワードと思われる人物から上司しか知らないようなことを言われ、ポカンとするハボック。
「おい少尉昨日の紙何だったのか説明しろよな」
呆然とするハボックにエドワードが追い打ちをかける。
ホークアイと思われる人物が普段にあるまじき言動をした。それだけでどえらい破壊力を持っていた。
「大佐、これはどういうことっスか」
「見ての通りだ」
「わかんないから聞いてるんスよ!」
ハボックの足りない脳みそは沸騰寸前だった。
理解しきれるわけがなかったのだ。
ところがそんなことお構いなしに、ロイは新たな情報を投げつける。
「原因はどうやらお前のようだぞ、ハボック」
今なら死ねる。
この瞬間ハボックはそう思った。