にゃあ、と小さな鳴き声が聞こえた。
弟かと思って振り返れば僕じゃないと首を振っていた。
「あっ!」
きょろきょろ辺りを見回してから、弟が叫び声を上げ本をほうり出した。おい、大佐に怒られんのオレだぞ。本棚の奥から戻ってきた弟は腕に見覚えのあるネコを抱いていた。
黄色の毛並みに虎縞模様。
「兄さんこの子って……」
「ああ、あの時の」
忘れもしない、一年前。
どっかの焔の大佐(あんときは中佐だった)とマルコーさんの情報と引き替えに戦ったときの話だ。
アルが拾ってきたネコを飼ってもらう、という約束もあったのだが結果的には元の場所へ戻すことしかできなかった。
……はず。
「あ、ちゃんと首輪ついてるよ。誰かが飼ってくれてるんだ!」
アルが嬉しそうにネコを抱いてくるくる回っている。ネコが可哀相だ。
「名前もついてる! とら、じろう?」
兄弟いねえのに次郎って。
誰かのネーミングセンスは置いとくことにして、アルが先程投げた本を拾い上げた。
その時ドアが開いて大佐が現れた。手には小皿。
本拾っててよかった。
「虎次郎はいるか?」
「虎次郎って、こいつ?」
ネコを指差せばそうだというようにネコがにゃあと鳴いた。
アルの腕から飛び降りオレの横をすり抜けていく。大佐の元へと。
「大佐がそのネコ飼ってんの?」
「ああ、そうだが」
ネコに水をやりながら微笑む大佐。何か気持ち悪い。昼に食ったカツ丼が出てきそうなくらいには。
「拾ったのか?」
「一年前くらいだな。確か鋼のと戦った日に見つけた。やけに豪勢な箱に入ったネコだったから気になってしまったんだ」
だから拾った、と大佐は笑った。
ふーんとしか返せなかったのはオレのせいではない。大佐が気持ち悪いせいだ。
ふと大佐を見るとニヤと唇の端を吊り上げた。
「嫉妬か? 鋼の」
「なっ」
虎次郎が大佐の足元に擦り寄っている。
「君も虎次郎みたいに素直ならいいんだがね」
オレは言いようのない怒りにかられて手にしていた本をぶん投げた。
しかしあっさりキャッチされる。
何をするにもイケメンでムカつくことこの上ない!
「本を投げるものではないよ」
大佐はそのまま笑いを残して扉を閉めた。
「ああー!! もう!」
吠えて床に座り込む。
虎次郎を抱いてにまーと目を細める弟が恨めしかった。


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設定はアニメ一期なのに口調は二期
大佐に「お前」って言わせにくい

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