「初恋は叶わない」
そんな言葉を何度聞いただろうか。私の淡く切ない初恋は小学生の頃、同じクラスで隣の席の松野一松くんという男の子だった。初めはぶっきらぼうな子だな、と思ったけど実はとても優しい。クラスの友達はみんな「何であんなのがいいの?」「松野くん怖いじゃん」「すぐ睨むし」等悪い評価ばかりだけど、私には周りがそう思う方が不思議だった。松野くんは学校裏の野良猫にこっそり餌をあげているし、私が消しゴムを忘れてしまった時は黙って貸してくれた。「ありがとう」と言っても彼は何も言わないしすぐにそっぽを向くけど、少しだけ優しい顔をする。私はそんな松野一松くんに気付けば惹かれていって、初めて人を好きになった。
「初恋は叶わない」というのはあながち間違いではないのかもしれない。思いっきって想いを告げるも、あっさり玉砕。一言「そういうの、興味無いから」と切り捨てられたのだった。きっと初恋はそんな風に終わりを告げ、またいつか人を好きになる。けれど私の場合そうはいかず、10年経った今でも変わらず忘れられずにいた。

松野くんとは小中と一緒だったけれど、高校は男子校に進学してしまった為再会したのは成人式の時。それが今だ。松野くんは最後に見かけた中学の頃と同じ気だるさで、だけど身長も伸び声変わりもし、しっかりと大人の男の人に近付いていた。スーツ姿がとってもかっこいい。

「るり、松野一松のこと見すぎ。」

「えっ、だって松野くんかっこいいじゃん」

「………」

私の声が本人に聞こえてしまい、振り返った松野くんとばっちり目が合ってしまった。お互い目が合ったまま逸らせない。松野くんが私を見てくれている、松野くんの視界に私が入っている、それだけで嬉しい。

「え、もしかしてあんた小学校の頃からずっと松野のこと好きなの?」

友達の質問に、松野くんと視線が交わったままゆっくりと答えた。

「多分、まだ好き。………大好き」

久々の再会に花を咲かせ、お喋りの尽きなかった私達の周りが一瞬静まりざわついた。こんな公開処刑みたいな告白、驚くだろうなぁなんてまるで他人事みたい。

あれっ、ちょっと待って。おかしい。なんでそんなに顔が真っ赤なの松野くん。小学生の頃告白した時は、顔色一つ変えなかったのに。ねえ、そんな反応期待しちゃうじゃない。そんな反応されたら、私の初恋がいつまで経っても終わらせることが出来なくなるよ。

多分、なんてつけられなくる。やっぱり私は松野一松くんがすき、堪らなく大好きだよ。

「私、やっぱり松野くん好き」

「えっ…や、あの」

「好き、大好き」

「いや、もうやめ…やめて」

どんどん顔が真っ赤になっていく松野くんが本当に可愛くて、周りが「うおおお!」「すげー!公開告白!」と盛り上がれば盛り上がる程松野くんは恥ずかしそう。顔が赤い、と指摘をされたら「…酒のせい」と呟いていた。

ねえ、あれからもう何度も目が合ってるよ。…期待してもいいのかな。

「初恋は叶う」って思っても、いいのかな。
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