「あー、けほっ、んんっ」
隣の一松が何やら喉を煩わしそうに咳をしている。何となく怠そうな感じもする。心配そうに顔色を覗く。
「風邪?」
「うーん、多分」
えー、じゃああったかくしないと。それから食べやすいようにお粥かうどんでも作るから、食べたら薬飲んで早めに寝なよ。そう言って立ち上がると手首を掴まれた。
「え、どうしたの?」
「…いいから」
「えっ?」
「そういうのいいから、隣で寝て」
そう言われ強引にベッドへと連れ込まれる。風邪をひいたから人肌恋しいのかななんて仕方なく添い寝をすると、嬉しそうに密着してくる一松。相手は病人なのに、ドキドキしちゃうよ…。
「そういえば、熱はあるの?」
「んー、どうだろ」
一松の額に自分の額を当てて、熱をはかってみる。んー、熱はなさそうかなあ…一応体温計…ふと目の前の一松と間近で目が合って心臓が大きく跳ねる。熱あるのかな、だからそんな熱のこもった瞳で見つめてくるの?恥ずかしくなって距離を少しとる。一松は「なんで離れるの?」とにやりと笑う。
「か、風邪ひいてるんでしょ…っ!大人しくさっさと寝ろっ!」
「ああ、風邪ひいたっていうの、嘘だから」
「はっ?!」
「甘えられるかなって思って。るりに触れられるし触れてもらえるし」
心配して損した…!
それでも、そんな事を言う一松が可愛いなんて思ってしまう自分は相当奴に甘いんだと思う。
「ねえ、もっかいはかってみて」
「え、」
「もっかい熱、はかって」
言われるがままもう一度額をくっつけると、加速した鼓動がもっと早くなる。一松は変わらずあたしを見つめたまま。
「どう?」
「どうって…」
「俺、顔赤い?」
「うん…」
「…るりも、赤い。ドキドキしてんの?…それとも、風邪なの」
「……うっさい」
それでも額は合わせたままで、あたし達はゆっくりとキスをした。ほんとに風邪をひいてしまったみたいに、あつくてぼーっとしてる。このままほんとに二人で風邪をひいてしまってもいいかもしれない。そしたら二人でずっとベッドにいられる。そんなこと考えてしまう程、あたしはこいつに惚れてしまっているんだ。
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