※ リック夢。BL夢。女顔の男夢主受け。ドライハンプしてます。R-18。キャラ崩壊注意。



あの薄いブラウンの瞳が自分を見つめるたび、本当は愛おしさに気が狂いそうだった。

マイ・ディア・ボーイ

リックがハルカと出会ったのは最初の頃だ。リックがモーガンに助けられ、家族を探そうとアトランタへと旅立った直後だった。たまたま立ち寄った民家でウォーカーに襲われそうになっていたリックを、突然現れたハルカが助けてくれたのだ。

「貴方は…不思議な人ですね。ウォーカーを殺すことにまるで慣れていない」

出会った日の夜。薄いブラウンの瞳をいたずらっぽく輝かせながら、ハルカはリックに告げた。リックは返事をせず無言で視線を焚き火へと向ける。2人は人気のない道路脇に車を止めて暖をとっていた。暗闇で焚き火をする行為は危険にも思えたが、ハルカが「大丈夫です。付近に奴らの気配はしませんから」といったため、リックはそれを信用することにしたのだ。この世界で目覚めたばかりの自分と、目の前でナイフ一本でウォーカーを仕留めたハルカ。リックはしばし悩んだが、どちらの推測を信頼すべきかは明らかだった。

「俺は…俺には、まだ割り切れそうもないんだ」

ウォーカー達がすでに人間ではないことはわかっている。それでも、元は人間だった、今も人間の形をしている相手を刺したり撃ったりする行為を、リックはまだ割り切れていなかった。

「優しいんですね…」

長い睫毛を伏せてそう呟いたハルカの横顔を、リックは不思議な気持ちで見つめた。

この青年は、美しい。女性とも男性ともいえない中性的な見た目とは裏腹に、一瞬でウォーカーを仕留めた上に傷1つ負っていない。それどころか、その物腰は若さとは裏腹に老成していて不釣り合いなほどだ。

「…君は平気なのか?」

リックの問いに、ハルカのミルクチョコレート色の瞳が潤んだように瞬く。直後呟かれた言葉は、リックの不意をついた。

「俺には、ウォーカーと人間の違いがわからないんです」

だって、どちらも人を襲うでしょう?

-

その後リックはローリ達と合流し、紆余曲折を経ながら旅を続けていた。勿論、道中幾度となくリックを助けたハルカも一緒に。

ハルカと旅を続けるうちに、リックは段々と彼のことを理解し始めた。

第一に、ハルカは誰に対しても穏やかだった。それは荒くれ者のダリル相手であっても変わらず、すぐにダリルとハルカは仲良くなった。暇があれば2人で狩りへと出かけ、山ほどのリスを携えてキャンプへと帰ってくる。その見事なコミュニケーション能力と順応力に感心しつつ、なにかがリックの胸をちくりと刺した。それはどこか覚えのある感情だったが、リックはすぐにそれを勘違いだろうと無視した。

第二に、ハルカは過去のことを語りたがらなかった。長く旅を続けていると、皆どこかのタイミングで自分の過去について語り出すことが多い。「以前」の職業や家族のこと、失った友や故郷のこと。ほとんど全員が焚き火を囲みながら何かを語った夜でも、ハルカは物言わずじっと他人の話に耳を傾け、個人的な質問をされても曖昧な笑みを浮かべて流してしまった。普通なら不信感を覚えられるところだが、ハルカの美しく不思議な佇まいがそれを防いでいた。何か事情があるのだろう、そう理解したメンバーが彼に個人的な質問をしなくなったのはそれからだ。
それでもリックにだけは、ハルカは過去を語った。月の出ない夜に見張りをしながらたった2人で囲んだ焚き火。ふいに訪れた静寂を破るように、ポツリと語られたハルカの過去。それは短い告白だったが、リックの心を砕くには十分だった。

『俺…昔から男に好かれるみたいなんです。なんでかな、誘っているつもりはないんですけどね…無理やり痛いことされるから、あんまり好きじゃなくて』

そう薄く笑った横顔が酷く乾いていて、リックはどう声をかければいいのかわからなかった。わからないまま肩を撫でると、ハルカの小さな頭がゆっくりとリックの肩に落ちる。今まで警戒していた猫が懐いたような、突然の接触。ハルカのサラサラとした黒髪が頬に触れた瞬間リックの心はざわりと騒いだが、この時もやはり深くは考えなかった。その僅かな重みが芽生えたばかりの信頼を表しているようで、ただ嬉しかった。

第三に、ハルカは強かった。とても、とても強かった。誰の助けも必要としないほど強いハルカは、いつでもナイフ一本でウォーカーを倒し、傷1つ負うことがない。だから刑務所をガバナーに襲撃されて仲間が何人も死んだ時も、彼は無傷だった。無傷ながら人間とウォーカーの血にまみれたその姿は、悲しみに打ちひしがれていた。

「ねえリック、やっぱり怪物と人間は変わらないね…」

だってこんな酷いことができるんだから。

この頃になると、ハルカはリックに敬語を使わなくなっていた。長い間一緒に戦い生き残ってきた仲間同士なら当然のようにも思えるが、リックにはハルカのそんな変化が嬉しかった。だがその喜びも、仲間と唯一家と呼べた刑務所を失った今は虚ろに感じられる。グループの皆とはぐれ2人で森をさまよいながら、無意味ともとれる虚しい会話は続いた。

「…わからない、俺には…」
「じゃあさ、俺は、リックには何にみえる?」
「…どういう意味だ?」
「俺は、怪物?それとも人間?」

質問の意図はわからなかったが、その美しい顔をみつめリックは頭に浮かんだことをそのまま伝えた。

「君は…天使だ」

美しいままで醜い人間に罰を下す、黒髪の天使。ウォーカーも人間も区別せず、罪を犯した人間を等しく裁く存在だ。

「…リックって、結構キザなんだね」

顔に飛び散った血をぬぐいもせず、ハルカはポツリと呟く。急に切なくなって、リックはその細い手首を掴んだ。

「君は…始めで出会った時からずっとそうだ。本心を見せたかと思えば、すぐそうやって引っ込める。…今まではそれでもいいと思っていた」
「何、急に…」
「急じゃないさ。ずっと考えていた。どうして君はそうなのかって…でも、もうやめたよ。君のことを理解できなくても、君はそばにいる。今も、こうして。…俺はそれで十分だと思うことにした」
「…リックって、変わってるね」

初対面の時のようなことを口にして、ハルカはなんだか拗ねたようにそっぽを向いた。まるで照れ隠しのような態度。言葉のわりにリックに掴まれたままの手首を解こうとするわけでもなく大人しくしている。その様子が普段の大人びたハルカより随分と幼く感じられてリックは不思議な気持ちになった。そして考えた。いつから彼はこんなに柔らかい表情を自分に見せるようになったのか…と。

-

その後リックは家族や仲間達と合流し、新天地を目指した。刑務所襲撃後からハルカとの元々近かった距離はさらに縮んだように思えたが、それはあくまで精神的な面にとどまった。時折視線を交わし見つめ合うことはあっても、直接的な接触はほとんど無かった。今はただ生きのびることで精一杯、それは一見2人の物理的な距離感への納得のいく説明に見えた。少なくとも、そう思う他なかったのだ。

ハルカが自分の過去について話してくれた夜、肩に乗った小さな頭の重みを思い出す。さらりと触れた黒髪の感触を、まるで宝物のように反芻しながらリックは思う。これでいいのだ、と。

直接触れ合ったら最後、自分が何をしてしまうのかわからなくて、リックはハルカへの本当の気持ちを確かめることを恐れたのだ。

-

長く辛い旅の後…アレキサンドリアに着いてすぐに、リックは異変に気がついた。

ハルカが自分を避けている。

それに気づいた時、リックは心臓がギュッと痛むのを感じた。仲間だと、家族だと思っていた相手に避けられる。その気づきは予想以上にリックを傷つけた。

近づけば「用事がある」と何処かへ行ってしまう。
視線を合わせようとしても叶わない。

理由がわからず苦しい。けれど、その理由を確かめるすべもない。自分と一回り以上も年の離れた青年だ。2人の間には何もない。血の繋がった家族でも恋人でもない相手が自分と少し距離を取りたがったからといって何故そこまで傷つく必要がある?彼は友人だろう?…そう思うのに、リックの心は酷くざわついた。

やっと心を開いてくれたと思った。それなのに、彼はまた遠ざかってしまうのか。

ハルカの周囲の人間に対する態度も、リックのストレスに拍車をかけた。今までは周囲の人間と一定の距離をおいていたハルカが、今はむしろ積極的に関わろうとしているのだ。それに元々仲の良かったダリルともそのままの距離でいる。リックだけがハルカの許す輪の外にいるのだ。…よりによって、なぜ自分が。

アレキサンドリア内の住宅街、道の反対側で住人の若い男と穏やかに談笑するハルカを見つめる。リックは壁の外の調達から帰ってきたばかりで、存在には気づかれていないようだった。

(あそこは…あの場所には、俺が居たはずだ)

親しげに談笑する彼らをみて、薄暗い感情が首をもたげる。この感情には覚えがあった。昔、ハルカがダリルと急速に仲良くなった頃に抱いたそれだ。今リックははっきりその名前を知っている。…嫉妬だ。

「やあ!リック、帰っていたのか」

ハルカと談笑していた男がこちらに気づく。リックは男の名をうっすらとしか覚えていなかったが、あちらは有名人である自分をはっきり認識しているようだ。

「ああ…予定より早く終わってな」
「そうか…あれ?ハルカ、もういいのか」

男がハルカを呼び止める。親しげにハルカを呼ぶその態度に少しの不快感を覚えたリックだったが、それよりも自分が来るなりその場を去ろうとしたハルカに気を取られた。

「用事があるから。…じゃあ、また」

伏し目がちに告げてくるりと背を向ける黒髪。その瞬間、リックの中のなにかが弾けた。

「まってくれ」

一瞬だった。自分でも気がつかないうちに、リックはハルカの腕を掴んでいた。

「…何?痛いよ、リック」

リック。久しぶりに、その桜色の唇が発した自分の名前。

「話がある。きてくれ」

そう告げると、リックは返事もきかずハルカの腕を引っ張って自分の家へと力強く歩き出した。ハルカも、特に抵抗せずに引きずられるがままだ。

「…なんだったんだ?」

その場に残されたのは、突然の出来事に混乱したままの名もない男1人だった。

-

バン!

家に入るなりリックはハルカを室内へ放り、勢いよくドアを閉めた。自分でもなぜこんなに乱暴になってしまうのかわからなかったが、今この場を逃せばまた永遠に彼を捕まえられない気がしたのだ。

「…なにするの」

リックに放られ、少しフラついたハルカが恨みがましく掴まれていた腕をさする。そんなに強く掴んでいたつもりはなかったが、ハルカの細腕には負担だったのかもしれない。普段のリックなら謝罪するなり心配するなりしただろうが、今の彼にはそんな余裕はなかった。

「なにをするだって?…それはこっちのセリフだ。俺が君に何をした?君が嫌がるようなことをしたか?俺が嫌いになったなら、ハッキリ言えばいいだろう。こんな…コソコソ避けるような真似をしなくても」

最初は怒りを込めて喋り始めたリックだったが、話し終える頃にはその口調から覇気が消えていた。『ハルカに避けられている』という事実を己で口にした途端、それがより現実味を帯びてリックを傷つけたのだ。自分はきっと嫌われているのだ、この美しい青年に。

「そっか、ごめん」
「…」

ハルカの囁くような謝罪が、リックの心へ触れる。それはまるで極度の乾燥でひび割れた大地に染み入る一滴の雫のように、リックの心を軋ませはしても癒すには到底足りなかった。

「…リックは、真実を欲しいよね?」
「ああ…」

自分がハルカに避けられている理由。せめてそれをききたい。たとえ真実が残酷なものであっても、何も知らずに置いていかれるくらいなら、今この場で心を砕かれてしまった方が100倍マシだった。そうすれば、もう未練がましくハルカの美しい黒髪を目で追うような事もきっとしなくなるだろう。

そう感じたリックが挑むようにみつめると、ハルカは観念したように呟いた。

「だってリックは、俺のことを抱きたいでしょう?」
「…っ…」
「いつも穴が空くかと思うくらい俺を見つめてさ、自分で気づいてないの?すごい顔してるよ」
「な、にを…」
「いいんだ。誤魔化さなくてもわかる。だって同じ顔をしてるもの」

今まで俺を押し倒した奴らとさ。

そう告げたハルカの表情は、驚くほど冷たい。

「…っ…違…」

違う、と言いかけてリックはフリーズした。本当にそうか?自分は、この美しく愛おしく思っている青年を、欲を孕んだ目で見始めていたのではなかったか?だから怖くなって自分から触れることをしなかった…違うか?

ハルカに向かって伸ばしかけた手が所在無さげに宙を彷徨う。この手は、きっとハルカを傷つける。

「…いや、そうだな。確かに俺は君をそういう目でみていたかもしれない」
「……」
「君の過去を、君の痛みを知っていたのに俺は…」

深いシワを眉間に刻み、痛みに耐えるような後悔の表情でフローリングを睨むリックにハルカの心は切なく軋んだ。自分は、こんなに優しい人を傷つけている。

リックは被害者なのだ。たまたま男を惹きつける容姿に生まれついた自分の、毒の花のような卑しい魅力に騙されてしまっただけの。

「リック…」

ハルカの心は揺れていた。

リックが真実を求めたから、わざと嫌な言い方をした。冷徹な表情までわざわざ作って、アレキサンドリアに着いてからはわざと彼を避け続けて、それでリックが自分を嫌ってくれればいいと思った。そうすれば、自分もリックを諦めきれる。こんなに誠実で素晴らしい人は、自分のように汚らしい存在とは関わらずにいるべきだ。過去にはそんな風にハルカに冷たくあしらわれた末に、彼を「淫乱」と罵った男すらいたのだから。

でも、自分の心は?本当はリックを愛おしいと思うハルカの心は、一体どこへいけばいいのだろう?

そう瞬間的に思い悩んだハルカの無言を、拒絶と受け取ったのだろう。リックは深くため息をつく。それは諦めからだった。

「…手荒にしてしまってすまなかった。君にはもう付きまとわない」

だから、安心してくれ。

そう言外にいったリックがくるりとハルカに背を向ける。シャツを透けて盛り上がった筋骨隆々なリックの背中は、心なしか普段より小さくみえた。

「…っ!…」

それを見た瞬間、ハルカの心は粉々に砕けそうなほど痛んだ。気づいた時にはもう遅かった。ハルカの足はフローリングを蹴って駆け出し、全身でリックの背中に縋り付く。

「…あ、…」
「ハルカ…?」

何も考えていなかった。ただ、このままリックを行かせてしまったら一生後悔するような気がしたのだ。ハルカの心は「今すぐ離せ」と叫んでいたけど、体はリックに縋り付いたまま離れない。全身が、目の前の優しい男を欲していた。優しくて強くていじらしい、ハルカにとって誰よりも大切な人を。

「あ…俺…」

あなたが好きだ。
ずっとずっと、好きだったんだ。

そう言いかけた時、リックの体が大きく捻られ、気がつけば一瞬のうちにハルカの方が抱きすくめられていた。声を上げる暇もなく、リックの大きい体がハルカの一回り以上華奢な体をきつく抱きしめる。

「リック、あの…俺…」
「…俺は、俺は君を愛していると思う」
「…っ…」

告げられた愛の言葉に、ハルカの心臓は甘く締め付けられる。体がカーッと熱くなって、頬が火照るのを感じる。それに呼応するように、リックの体も熱を持つ。

「君が嫌なら今すぐ諦める気でいた。ただこういう風に触れられてしまったら、俺は君に期待してしまう。…今だって君を自分のものにしたくてたまらないんだ」
「リック…」
「俺が嫌いだと言ってくれ。顔も見たくないと。そうしなければ、俺は、君を…」
「あ…っ…」

苦しげに、愛おしげに呟いたリックの大きな手がハルカの背中をするりと撫でる。それは背中から腰へ、腰から太ももへといやらしく移動し、けれど決して核心的な部分には触れようとはしない。それはリックがハルカへ引いた最後の一線だった。ハルカが自分の言葉でリックを受け入れるまで、絶対に超えてはならない境界線。

「ハルカ…愛してる、ハルカ…」
「は、あ…リック…」

リックの大きな両手が服の上から全身を辿る度、ハルカの中心に熱が灯っていく。きつく抱きしめあった2人の股間は、もう限界と言っていいほど張り詰めていた。ジーンズ越しに擦れ合う性器。溢れ出した快楽の雫は、あっという間に互いの下着をヌルヌルに濡らしむせ返るような性の香りを室内に充満させ始める。

「あ、ね、リック…」
「は、…なんだい…?」

潤んだ声で呼ばれる自分の名前が驚くほど甘くて、リックもおもわず幼子にきくように尋ねてしまう。次の瞬間に放たれた言葉は、そんなリックの理性を粉々してしまうには十分だった。

「ぼ、くを…抱いて…」
「ハルカ…ッ…」
「リックが、好き…だからリックので、ぐちゃぐちゃにして…おねが…ああ…っ…!」

その言葉を最後まで聞く前に、リックの腰は大きく動いていた。ジーンズ越しに張り詰めた性器をグリグリとハルカの股間に押し付け、その小ぶりな顎を掴んで深い口づけを施していく。

「あ、ん、むう…ああ、あああっ…」
「は、あ…ハルカ…マイボーイ…」

いつ誰が入ってくるとも知れないリビングで、2人は発情した犬のように腰をガクガクとふる。ジーンズ越しにネチャネチャとこすれあう硬く起立した性器。唾液を飲むように舌を絡ませ、境界が無くなってしまいそうなほど深く、深く口づけあう。服越しの刺激だけで達してしまいそうな程の快楽の嵐の中で、お互いだけが灯台のように唯1つの目印だった。この荒れ果てた世界の中で、互いだけが。

「あっあっ…いっちゃ、いっちゃうよお…ぼく、ああっ…」
「お、れもだ…ああ…クッ…!」

ハルカの尻を揉みしだく手に力が入り、リックの股間は暴発寸前だ。甘えるように「ぼく」というその声も、紅潮した頬に汗で張り付いた黒髪も、自分よりずっと小さな体も…全てが下半身の快楽に直結し、リックはついに限界を迎えた。

「ああ、あ…リックう…だいすきい…っ!」
「ふ、クッ…!!!!!」

ビュ、と鈍い音がして、リックは勢いよく下着の中に精を放った。一際強く腰を振ったリックに追随するようにハルカの腰がガクガクと絶頂を迎えて揺れる。すっかりベタベタになった下着の中を射精で更に濡らしながら、ハルカとリックは更に股間を強く押し付けあってブルブルと震えた。室内に響くのはハルカの喘ぎ声をにじませた甘い吐息と、リックの獣のような荒い息だけだ。

「は…は、あ…」
「は……愛している…ハルカ…」
「ん、俺も…」

チュ、チュ…と小さく甘やかな事後のキスを交わしながらリックは思う。この誰よりも美しく甘い青年を、自分は然るべき時が来た時に手放せるのだろうか?

そして同時に、ハルカも同じことを考えていた。この誰よりも愛おしく優しい男のことを、自分は独り占めせずにいられるだろうか?皆が憧れ、付き従う英雄であるリックを…。

2人が改めて互いの気持ちを確認しあい、言葉で愛を確かめ合うのは数分後の未来の話だ。ただ今この瞬間は、2人とも愛しい相手の体をもう暫く離せそうにはないのだった。

Fin.




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