そして少女は失った

「あら、ロアじゃない」
「お、ルーティじゃんか」


そして少女は失った
(ルーティ=カトレット)


「あんた、今日は何かご機嫌ね」
「そうかね。分からんよ」
「だってさっき鼻歌歌ってたじゃない」
「嘘。どんなの歌ってた?」
「えっと、確かね…平和の鐘が鳴る、群衆の中…あー、ここから忘れちゃったわ」
「空に響く笑い声は、永久に続くものへと、世界が味方となった勇者に捧ぐ…だね」
「そうそう、そんな感じだったわね」
「へえ、私こんなの歌ってたのな」
「そうよー。何て言うか、あんたらしくない歌ね」
「仮にもディセンダーなんだけどね。ま、日頃の行い的にはそぐわないわな」
「そこは認めちゃうのね。まあ、あたしは今のあんたの方が偽善っぽくなくていいと思うわ。ほら、後々ぎゃあぎゃあ騒ぐ恩着せがましい奴とかいるでしょ?」
「ああ、アンジュのことね」
「ちっ、違うわよ!」
「だってあいつ、私がルミナシアの民から貰ったパインを何の断りも無しに奪ったりするんだよ?私が取り計らったクエストだから、私が貰うわね、とかって言ってんだよあれが聖職者とか有り得なくね?世界滅ぶんじゃね?つーかいっそのこと滅んだ方がよくね?こんな分厚い化けの皮貼り付けた様な奴が蔓延る腐った世界なんてさ」
「…やけに愚痴が多いと思ったら、あんた、パインが好きだったわね」
「そうなんだよ。あの時程あの女を恨んだ事は無いね。無意識に秘奥義発動するところだったからマジで」
「はあ…仕方無いわね。ほら、あたしについてきなさい」
「何で?」
「パイン、食べさせてあげるわよ」
「嘘だろ…強欲の魔女と名高いお前がそんな恰も善人の様な振る舞いをするなんて…」
「煩いわね!文句を言うなら連れてかないわよ!」
「悪い悪い、黙る黙る。で、何処に行くよ?」
「お宝探しのついでに見つかるんじゃないかしら〜?さ、行くわよ!」
「てめっ、それ私まで付き合わせる気かよ」
「ふふっ、たまにはいいじゃない?」
「よかねえよ」
「そんな事言いながら、優しいディセンダー様はちゃんとついてきてくれるのねー?」
「後で覚えとけよテメェ」

 
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