日曜日、寮のロビー

「おはようございます。」
「あ、おはようございます。あれ、ええと。」
「僕は天田乾です。よろしくお願いしますね、ソラさん。」
「乾くんですか。私の名前知ってるんだね。こちらこそよろしくお願いします。」
「順平さんが嬉々と僕に教えてくれましたからね。月高の天使が寮に舞い降りた！って。」
「あはは、なんだそれ。じゅんぺーくんは面白いねえ。」
「ソラさんも見ていて面白いですよ。」
「何故なにもしてないのに面白ターゲットにされてるのわたし。なんかしたっけ？」
「昨晩有里さんに介護してもらってたのを見ましたから。」
「介護？なんだろう。」
「あの一連の流れ、記憶無いんですか？」
「どの一連の流れ？取り敢えず昨日有里くんに介護してもらった記憶ないよ私。」
「…まあ、いいんですけどね。えと、あの。」
「ん、なあに？」
「その…僕、ちょっと寝坊しちゃって、朝食を、その…。」
「あ、朝ごはん食べてないんだね。冷蔵庫の中にあるもの使っていいなら、簡単なものなら作れるけど。」
「本当ですか！？」
「うん。これ、勝手に使っていいものなの？」
「はい！ここに入れておいたって、どうせダークマターにしかなり得ないものばかりなので。（荒垣さん以外は、だけど）」
「（だーくまたー？）じゃあ、お言葉に甘えて。乾くんはなにが食べたい？」
「…フレンチトースト、とか。」
「フレンチトースト…と。卵あるから出来るね。よし、ちゃちゃっと作っちゃうから、ちょっとだけ待っててね。」
「はいっ！」


「…で、有里さんはそんなところに隠れて何をやってるんですか？」
「天田のフレンチトーストを強奪しようとしてる。」
「正気ですか。どうしたんですか有里さん、有里さんらしくない。」
「天田が僕に隠れて坂田さんに朝食作ってもらったりするから、つい憎悪がね。」
「坂田さん、なんですね。」
「どういう意味？」
「僕、彼女のこと、ソラさんって呼んでます。」
「！」
「あは。こういうの、子どもの特権ですよね。」
「…でも、子どもは今流行りの女子の憧れ、通称・壁ドンとかは出来ないだろ？」
「…有里さんだって、彼女とそんなことが出来る間柄じゃないですよね？」
「将来的に坂田さんは有里ソラになるから、今に出来る日がくるよ。追い詰めて追い詰めて、僕しか見えないようにして、坂田さんを僕だけのものにするんだ。」
「犯行予告と受け取ってもいいですよね、それ。ポロニアンモールの交番にだけはお世話になりたくなかったですね、有里さん。」
「天田は今日一人でタルタロスね。」
「そんなことしたら、ソラさんが心配して僕を助けに来てくれるんだろうなあ。それでこれが有里さんの仕業だと知ったらソラさんに嫌われちゃいますね、有里さん。」
「…。」

何気にこいつが一番厄介かも。