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この男達は何をしているんだろう。
私は腹部の痛みと、先ほど壁に打ち付けられた衝撃で朦朧とする脳内で、冷静に状況を分析しようとした。
お気に入りだったケープコートは道端に捨て置かれ、ワンピースは引き裂かれ、体を触られ、傷付けられた。
彼らは何がしたいのだろう。私を殺したいのなら、もっと簡単な方法があるのではないか。私は他のホムンクルス達と違って、娘一人分程の能力しか無いのだから。
胸や足を触られ、私にはただ不快感だけが募っていく。私が顔を歪めると、彼らは楽しそうに笑う。何が面白いのだろう。私の苦痛に歪める顔がそんなに可笑しいのか。さっきもそうだった。逃げようともがけばもがく程彼らは笑う。私が何かに反応する度、彼らは歓喜に吠える。
身体を弄られ、舐め回され、言い様の無い不快感に無意識に涙が零れる。かと思えば腹や顔を殴られ痛みに喘ぐ。傷は石の力で自然と治っても、不快感は消えない。ただ、苦しい。
頭の中に兄弟たちの顔が浮かんだ。私は彼らに向かって、何度も何度も、たすけて、と呟いていた。
………



メランコリーの帰りが遅い。プライドの元へ行ったのは午後3時頃で、時刻は8時を回ろうとしているのに、帰ってくる気配すらない。
「メランコリー、どうしちゃったのかしら」
ラストが心配そうにため息をつく。
「時間に遅れることなんて一度も無かったのに…」
「どっかで道草でも食ってんじゃない?」
いかにもどうでも良い、という調子で口を出すと、ラストが睨んできた。
「エンヴィーじゃないんだから、…きっと何かあったのよ」
「心配性だな、おばさんは」
「確かに、心配だな」
さっさと探してくれば、と口走ろうとした瞬間、お父様が口を開いた。
「プライドの元からはもう帰っている、と先程連絡があった…エンヴィー、探してきてあげなさい」
何でこのエンヴィーが、なんて、お父様に向かって言える訳がない。
「……わかったよ、」
気持ち程度にコートを羽織って扉へ向かうと、後ろから「ちゃんと探すのよ」と、ラストの声が聞こえた。


取り敢えずプライドの家の辺りと、そこから帰り道を辿るように、建物の上から捜索した。既に日は落ちていて、月明かりと街頭だけを頼りにメランコリーの行方を探す。
もしかしたら入れ違いで帰ってきているのでは、と一瞬考えたが、あてが外れた時のことを考えるとこのまま探す他手はないと思った。
大通り辺りにはいないようだ。ならば路地が密集する商店街辺りか?もし帰り道に買い物でもしようと考えたのなら、ここを通ったかもしれない。
夜の路地は暗く探しにくい。一旦建物から降りて地面に降り立つと、細い路地を進んだ。

"それ"を見たとき一度は通り過ぎたのだが、"それ"が何かを理解し、直ぐに引き返した。
地面に無造作に置かれた黒い布。それを取り上げ広げると、見たことのある形をしていた。
メランコリーの着ていたコート。その近くには横倒しになった紙袋と、その中に入っていたであろう食料品やパンなどが散乱していた。
メランコリーに何かあったのか?この様子は只事では無いだろう。
ふと、その横にある細い路地が気になった。ここからでは暗くて奥の様子が見えない。
メランコリーのコートを持って、この道の先へと足を向けた。




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