そして私は白紙になる | ナノ








「そうよ……忘れる筈が無いじゃない……」

私が目指して、私が壊した、大切なモノ。
今迄目を逸らしてきた全てを、突然目の前に突き付けられられて。

噛み締めた唇から鉄の味がした。

「考えちゃだめ…ねぇ、アリスさん!」

メランコリーの言葉が、私を現実に引き戻そうと優しく手招いている。
しかし脳裏に渦巻く記憶の映像は留まること無く流れ続けるのだ。

夕焼け、草原、少年の声。振り上げる手のひら。涙を堪える傷だらけの幼い少女。黒髪の軍人。硝煙と死体。血に濡れた両手。
今度は雑音も歪みも無く、鮮明に思い出せる。

「ぅ……ぐ……!」

頭が割れる様に痛い。
それでもまだ、私は考える事を辞めなかった。

「アリスさんっ…?!」

メランコリーが私を揺さぶった。
私は咄嗟に、それを跳ね除ける。
少女の身体は床に倒れ、白く細い髪が衝撃に揺れた。

そして私は気付いてしまう。

少女の首元に、見覚えのある小さな刻印。尾を喰む蛇に、六芒星のーー…


「……グリード………」


左手の甲にあるその刻印と重なる。
私が今迄生きた場所。
"強欲"の名を持つその男こそ、私の居場所だった。



( 馬鹿野郎。お前は逃げるの下手くそだな )



「……、…嘘……だ……」



脳裏で再生される映像。目を逸らしても瞑っても、瞼の裏に反映されて。



( 逃げんのは下手くそだが……まあ、なんだ。生きてて良かった )



嫌だ

これ以上は、見たくない

ミタクナイ



( 短かかったけどよ、俺は、お前に会えて、人生楽しかったぜ )



「嫌ァ……!やめて……、お願い…!」







( あばよ、アリス )












---










頭痛はもう止んでいた。

怒りなど無かった。ただ私を満たすのは、狂おしい程の後悔と慟哭。


「…グリード……」


彼の名を呼んだ。戻らぬことは知っていた。

涙が床に染みを作った。



突然、視界が暗くなり、暖かいものに包まれる。

そこがメランコリーの胸の中だと云うことを、直ぐに理解した。



「可哀想なアリス……記憶が戻ったのね……」



少女の声の、なんと優しいことか。

私の髪を撫でる彼女の腕の中、私はただ悲しみに浸って…




「 犠牲であれ、人間 」




「……え?」







「 さようなら、アリス 」







言葉の意味に気付いたのは、頭部に衝撃を感じた後だった。


( 揺れる視界、駆け巡る記憶、消えて行く、景色 )


彼女のうなじに刻まれた、ウロボロスの印の意味とは。



私を見下ろす白い影に、最後の質問をする




「お前は、誰だ 」














「 私は、メランコリー



憂鬱の、ホムンクルスーー 」































---










意識が頭上を漂っているような酷い倦怠感に包まれていた。

目を覚ますと首と手が動かなかった。何かに繋がれているのだと理解するまでに、随分と時間がかかったような気がした。
逃げようにも身体が動かない。それどころか思考が働かない。意識がふわふわとして、つかむことができない。
ぐるぐると周り巡る脳内、歪む視界、動かない体。
遠くで微かに、何かの声を聞いた。




「 あなたは、誰? 」









END







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for 青金石様


ごごごごめんなさああアアアア(((スライディング土下座
夢主コラボって一度やってみたくて、その、夢主ちゃんお借りしちゃって、書いちゃいましたorzorz
もしも「トワイライト」の世界に「メランコリー」いたら的な……完全に誰得パロディ(((号泣
愛はあるんです!夢主様への愛は……ただ表現の仕方を間違った……それだけのことなんです………!!赦してください←
アリス様の一人称視点で、一応序盤では"メランコリー"はホムンクルスだってバレてない感じで物語が進行するつもりなんですけど、これ「メランコリー」読んでる人から見たらもうオチとかバレバレですやん?ってゆう……
そしてそれを書き終わった後に気付くってゆーね。うん。
ちなみに「トワイライト」Chapter2の14話後くらいの時間軸のつもりでした。。

も、もちろん返品可能です!!!

この度はコラボ許可ありがとうございました……!!


14.12.19


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