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街を歩けばド派手なイルミネーションに目が眩み、賑やかな音楽が耳障りなこの季節。
"お嬢様学校"と呼ばれるこの学園にも俗世の波は毎年押し寄せ、可愛い女の子たちがそわそわしだす。
終業式と同時にクリスマスイヴ。彼女たちにとっては素晴らしい記念日なのだろう。
「……エンヴィー、せんせ?」
ああ、来たか。
振り向くと清楚で大人しい処女が、上目にこちらを見つめている。
「あの……これ、メリークリスマス」
そう言って手渡されたのは、可愛くラッピングされたプレゼント。
今日で約10個目…か?
「あら、今年もすごいわね」
カツカツとヒールを踏む音が廊下に響く。
教師のクセにやたらと露出の高いワンピースを着たラストが、こちらを見てニヤリと笑った。
「ラストだって、毎年すごいでしょ」
「まぁね。それより、女の子からそんなにプレゼント貰っちゃって……あんたの女王様が機嫌を悪くするんじゃない?」
「別に……」
「あら、エンヴィー先生に、ラスト先生?」
噂をすれば何とやら。鈴の鳴る様な綺麗な声に、振り向くこともせず。
「ごきげんよう、メリー」
「ごきげんようラスト先生。…今日も一段と麗しいですわね」
「まぁお上手ね」
クスクスと笑うラストは彼女の本性を知ってか知らずか。
頭の後ろに感じる冷ややかな視線に、冷や汗が伝った。
「…それよりエンヴィー先生、レポートの添削、まだですか?」
「え、…ああ、えっと…」
レポートの添削?全く覚えが無いのだけど。
取り敢えず彼女に合わせておかないと、後が怖いから。
「確か、先生の部屋で見てもらえるんでしょう?」
「………あぁ、そうだね」
ニヤニヤと笑うラストを横目に、メリーと二人、廊下を歩く。
これから起こるであろう恐怖にため息を尽きながら。
「……あぁ、ラスト先生」
メリーが突然、振り向いて大声をあげた。
「メリークリスマス!」
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