▼ treat
「…………ンヴィー、エンヴィー!」
近くで、遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえる。
重い瞼を開け、ぼやける視界の先にいたのは。
「……おはよう、エンヴィー。」
目の前で死んだはずの、愛しい人の姿だった。
何度も何度も叫んだ、彼女の名前。
彼女をだきしめ、もう一度名前を呼ぶと、優しい返事が帰ってきた。
「ね、見て、エンヴィー。私ね、見えるの。エンヴィーの姿……」
彼女はそう言って、嬉しそうに笑った。
綺麗な青い目には光が宿っていて、それがたまらなく嬉しかった。
「ずっと遠くでね、エンヴィーの声がきこえたの。私の名前を呼ぶ声が聞こえて……目が覚めたらね、私、見えるようになってたの」
彼女の手の温もりを頬に感じる。近くで見る彼女の顔は幸せそうでーー美しかった。
「エンヴィー、あなたって本当に、綺麗な人ね」
彼女の頬に手を添える。
「君も、綺麗だよーー」
優しく重なった唇。
柔らかく心地よい彼女の温もりを受け容れる。
他人を愛する事の幸せを、生まれて初めてこの身で感じながら。