「リラも今回のバイト採用されてたね」
ネットで見たよ、と京介が私の顔を見るなり言った。
「学校まで来ないでって言ってるでしょ」
あまり視線を合わせないように横を通り過ぎながら言う。この名門女子高の校門に座っているにはこいつの外見はふさわしいものではない。話しているところを人にを見られるとやっかいだ。
「学校まで来ないとリラ掴まんないじゃん。今日オリエンテーションやるから採用された将軍職以上のバイトは集合することってメール来ただろ?どうせだから一緒に行こうと思って」
しかもこっちまで来た方が角度的にゲーム本部に下りやすいしね、と京介が立ち上がって一緒に歩きながら言った。
「今回アンタの階級は?」
「大佐。まあ俺は妥当じゃない?ほかのメンツも見たけどそれなりだったよ。ハンデ条件とレバレッジは行ってから発表みたいだけど」
「アンタと同軍ってことはハンデキツくなりそうでイヤ」
「俺はリラが参謀なのは有難いよ、やりやすくて…あっと、ここだ」
この地区からのアングラへの入り口である広告塔で立ち止まった。
「リラ、スケボは?てゆか制服で行く気?」
京介が背中に背負っていたソフトケースから派手にペイントされたスケートボードを取り出しながら聞いてきた。
「そこのロッカーに預けてある。待ってて着替えてくるから」
"表"の名門女子高の制服を着て地下に降りるなんて猛獣の巣にさぁ食べてくださいと子羊を投げ込むようなものだ。
近くのコンビニのトイレを借りてさっさと着替える。安っぽいキャミにパーカーを羽織って下はミニスカ。目をつけられるほど高級な感じがしなくて動きやすいもの、そしていざとなれば色気で勝負できる服装。でもこの場合より大事なのは服そのものじゃなくて武器。細くて軽いナイフを古典的に太ももにつけたバンドに刺し、自分のスケボが入ったソフトケースを背負うといういつものアングラに降りるときのスタイルで京介のところに戻った。
「アハハやっぱり大人しい制服よりそっちのがリラって感じ」
「え、やめてよ私もともとは"表"の住人だってば。じゃー下りよう。」
学校のカバンや制服はまたロッカーに入れる。アングラに下りるときはなにより身軽さが大事なのだ。
周りをうかがって人気がないことを確認してから広告塔の内部に入る。ゴウッと風が音をたてて通って行った。
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