現実と非現実



恐怖!日本全国有名ホラースポットにカメラが潜入!!今夜、あなたは幽霊を目撃する・・・。

「コレ見よっか」

いかにもな煽り文句に、テレビのザッピングをしていた手を止めた。

「へぇ、久しぶりじゃない。心霊物」

リラも読んでいた本から顔を上げた。

「最近めっきり無くなったよねー。昨今の子供がそうゆうの信じなくなった影響だな」

「数字が取れないのねぇ」

「こんなに面白いのにねー。」

画面では最近売り出し中のアイドルが、恐ろしげな顔をしてホラースポットの曰くを紹介している所だった。それによると、その橋では自殺者が絶えず、火の玉や人影を見たり、啜り泣くような声を聞く人が多発しているらしい。

「うん、番組の出だしに相応しいありがちなネタだね!」

「オリジナリティが無いわよね」

ポテトチップスを食べながら呑気にコメントする。

ホラー番組の愉快な鑑賞法。
@怖がりの人に無理矢理見せて反応を楽しむ
A可愛い女のコと見てイチャつく
B同じくらいくらいのテンションの人とチャチャ入れ大会

今回はBだね。この場合リラは相手として最高。

「うわー、わざとらしいビビり方・・・。あと、怖がる顔が可愛くないわ、そんなやり方で男の庇護欲掻き立てられると思ったら大間違いね。やっぱりこのコはアイドル止まりでしょうねー。」

ホラこの冷めっぷり!

「怖がる顔が醜いコっているよなー。そういう人は取り乱してるのもあって見苦しいのなんのって」

「怖がる表情だって練習次第よ。このコ、プロとして精進足りなすぎ」

「あー、やっぱり女のコってそうゆうの練習してたりするんだねー」

その後も日本全国津々浦々のホラースポットを番組が紹介している間、俺達は、今のカメラワーク悪すぎだよなーとか、来たよラップ音!音響さん頑張ってるとか、そこにそんな幽霊でるってどんなシチュエーションで死んだの?とか色々イチャモンつけて散々楽しんだ。罪のない遊びだよね。

そして何箇所目か。

北の暗黒開拓史!人柱にされた朝鮮人労働者の恨みの声が暗いトンネルに響く・・・○○トンネルの恐怖!!CMの後で!

「あ、私ココ行ったことある」

お菓子を食べる手を止め、突然言ったから驚いた。

「え、リラそっち出身だっけ」

「少しの間だけね。」

「へぇ。で、どうだった?幽霊見た?」

期待の眼差しで言うと、呆れた風にため息をついた。あ、絵になる。

「幽霊なんているわけないでしょうに。それとも何、アンタまさか信じてる?」

「俺はロマンを持った男だよ」

「本音は?」

「この科学の時代にそんなもん信じてるってナンセンスだよね」

満足げに笑ってリラが続ける。

「でも信じてる人には本当に見えちゃうらしいのよね」

リラが語りだす。

「通ってた中学校の行事でさ、ココ行ったのよ。近くの施設に泊まる宿泊研修の一環で。毎年の行事だけど本当に有名なホラースポットだったから、先輩とかにも幽霊見たって人多くて、その宿泊施設でも部屋の絵の裏にお札貼ってあったとかの話事前に聞いててね。みんな行く前から怖がってたわ」

「なんかトラウマになりそうな行事だね。なんでわざわざホラースポットで?」

「視力を失った人の体験するためって名目だったわね。もう使われてないトンネルで人通りも無いし、古いから照明もなくて本当に真っ暗なのよ。そんな場所中々ないからね」

「へぇー。」

「本当にあんな真っ暗闇なんて初めてだったわね、確かに。暗い夜に布団被って更に目を閉じた感じ?自分が目を開けてるか閉じてるのかも解らなくなるのよ」

「わーそれ楽しそうだね。」

「楽しかったわね実際。でも周りの子たちはそうじゃなかったのよ。事前に怖い話聞いてたし、13歳の時だったから、ほら、敏感な年頃じゃない?幽霊がいる、見える!って騒いで泣き出す子が出て来て」

「ほー」

「たちまち集団パニックよ。次々に私も、僕も見える!って泣きながら走り出したりして収拾つかなくなって。最終的にはクラスの3分の2ぐらいは泣いてたわ」

「ますます楽しそうだね。で、リラはどうしてたの?」

「あー・・・」

周りがみんな幽霊がいるって言うんだから、本当に見えるのかと期待をこめて辺りを見渡しても、何も見えない。

ち、信じる者にしか見えない系か。

自分で見るのは諦めて、でも集団パニックのただ中に身を置くなんて貴重な体験だと少し楽しくなり、走り回っている周囲の人を捕まえて、第一次証言を集めてみた。

「幽霊見えるの?どんな感じ?」

「解らない!とにかく怖い!!」

使えない。てゆか集団パニックに陥ってる人の典型だ。

次を捕まえて聞く。

「幽霊ってどんな感じ?」

「髪の毛が長い女の人!白い着物着てるの」

その子は結構大きな声で叫んだ。

・・・・ん?なんかそれって・・・。

それが聞こえた周りの子は「そう、女の人!」「今、手に髪の毛触った!」と口々に言い出した。

わぁ、こうやって集団パニックって伝播するのね。

その後、宿泊施設に戻った夜にもう一度話を聞いた。みんな落ち着いて、見たものをそれぞれで話し合ってた後だったから第ニ次証言。すると、見えた幽霊の特徴は「黒髪が長くて」「白い着物着てて」ということが一致。「頭に三角の付けてた」とか「透けてた」「足がなかった」という子もいた。

ちょっと期待ハズレ。
やっぱり幽霊っていないんだなぁ。



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