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5


夏休みはあっと言う間に過ぎ去り、いよいよ学園へ戻る日がやってきた。それは、名前姉との別れの日だという意味でもある。


「それじゃあ行ってきます。」

「別れるまでちゃんと名前ちゃんを護るんだよ。」

「藤内くん、名前をよろしくね。」


見送りに出てきた両親達に頷いて歩きだす。すぐに名前姉が手を繋いできたからちょっと恥ずかしかったけど、決して振りほどいたりはしない。昔よくやっていたから今更だし、じき離れてしまうこの温もりを、忘れてしまわないように。


「ねえ藤内。私ね、次に会えるのはいつだか解らないけれど、絶対藤内のことは忘れないから。」


寂しそうな顔で、切なそうな目でそんなことを言う名前姉がなんだか狡いと思った。心臓が、一際強く高鳴る。


「だから、だからね。藤内もたまにでいいから、私のこと思い出してほしいな。」


ぎゅ、と握られていた手に力が篭る。馬鹿言わないでくれ。そんなの、そんなの当たり前じゃないか。


「当たり前だろ。たまに、じゃなくていつも思ってる。俺が名前姉のことを忘れるわけないじゃないか。」


強く握り返せば、不安を色濃くしていた顔が笑顔を取り戻した。やっぱりこの人には笑顔が似合う。


「そ、か。そうだよね。私達幼なじみだもんね……えへへ。」


目尻に溜まった涙を指で拭って笑うその姿を、素直に可愛いと思ってしまった。

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