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俺は今何を言った?無意識に紡いだ言葉に羞恥を覚え、熱で火照った顔にさらに熱が集まる。
「ごめんっ、今のな」
なし、と言おうとした瞬間、柔らかく微笑んだ苗字さんに目を奪われた。
「久々知くん、薬は飲んだ?」
その質問にふるふると首を振って、朝からずっと寝ていたこと、食欲もなくてお昼以降は何も食べていないことを伝える。
「でも何か食べないと薬飲めないね。プリンなら食べれる?」
「プリン?」
プリンなんて冷蔵庫にあったか?と考えていると、苗字さんがはにかみながらコンビニ袋を差し出した。あ、その顔かわいいかも。
「来る時お見舞いに買ってきたんだ。」
袋から出されたプリンを見て、びっくりした。
「豆乳プリン?」
「あ、それ新商品だったからつい買っちゃったんだ。普通のもあるから、嫌いなら食べないでいいよ。」
俺が豆腐好きな事を知ってたのかと思って驚いたんだけど、苗字さんは違う意味で捕らえてしまったみたいだ。慌ててもう一つのプリンを出そうとする苗字さんより先に豆乳プリンを手にとる。
「いただきます。」
なんだこれ。かなり美味い。
「ごちそうさま。」
「薬も飲んだし、また寝たほうがいいよね。一人で部屋まで行ける?」
その問いに頷いたら、これ以上はお邪魔だから私は帰るね、と言って立ち上がる苗字さん。別に邪魔じゃないのに。ふらつく身体で苗字さんを玄関まで見送って部屋までたどり着いた後、どうしたかは覚えていない。気がついたらベッドの中で朝を迎えていた。