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 今日は鉢屋先輩の日ですね、なんて意味不明なことを言った彼女を見下ろす。にこにこ笑う顔が可愛くて思わず頬が緩みそうになるが、そこは堪えてどういうことか質問してみる。すると返ってきたのは何てことない、シャレのような答えだった。

「3月26日で三郎だから私の日ね」

今朝の会話を思い出して笑みが浮かんだのは、シャレが面白かったからじゃない。私の日だと言った彼女が、その後に発した言葉のせいだ。

「今日は三郎の日だから名前が何かあげるって約束をしたんだよな」
「そうそう、放課後までに何が欲しいか考えてて下さいって言われて……」

考えていた事をずばり絶妙なタイミングで言われたから違和感なく返してしまったが、すぐに嫌な予感がして顔を上げる。
すると予想した通りの人物が視界に入り、溜息を吐く。

「兵助、何でお前がそれを知ってるんだよ」
「それは俺が名前の愛しいお兄ちゃんだからだろうな」

俺達兄妹に隠し事はないんだ、と宣う得意げな表情が癇に障る。いつもならここで一言二言返してやるところだが、今日は違う。
 名前ちゃんに何を貰うか考えるのに忙しくて、そんな時間さえも惜しいのだ。ああ、何がいいかな。図々しすぎないギリのラインだと、手作りのお菓子ってところか? 本当は名前ちゃんの私物が欲しいんだけど、そんな事言ったら絶対引かれるしな。

「三郎お前、名前の処女を貰いたいとか言う気じゃないだろうな」
「さすがにそこまでは考えてなかったわ」

本当にこいつの変態ぶりには時々驚かされる。でも名前ちゃんが処女だという情報はしっかりと脳に刻み込んだ辺り、私も人の事を言えないのかもしれないが。
 それはともかく、名前ちゃんってやっぱり処女だったのか。彼女、純情そうだもんな。兵助のガードも固いし、もしかしたらファーストキスもまだかもしれない。

「ちなみにファーストキスは既に俺が貰ってるから」

だから何故考えが読めるのかと。兵助だからか。最早それで納得してしまえるのが怖い。
 まあファーストキスといってもどうせあれだ、兄妹でありがちな、幼い頃に戯れで交わすようなものだろう。だが、

「お前が言うとなんか厭らしいんだよ」

だからなのか、普通に悔しい。兄に嫉妬するなんて馬鹿げているが、こいつの場合は仕方ないだろう。名前ちゃんの事を兄としてでなく、変態として見ているんだから。

「次はファースト・ディープキスを狙っているんだ」

こんな具合にな。このままでは名前ちゃんの全てが奪われてしまうかもしれない。一刻も早くこいつを討伐しなければ。


彼女の貞操守ら騎士

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今日が三郎の日と知って慌てて書き上げましたが、設定は賀正企画の時のもので、気に入っています。現パロ高校生5年おいしい。

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