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※現パロ
白で囲まれたこの空間は、そこらじゅうに薬品臭が漂っていて落ち着かない。若干の居心地の悪さを感じながら特にすることもない私は、可愛げのない寝間着を着せられてベッドの上でぼうっとしていた。
「名前!」
隣人との境界線であるカーテンが突然開かれ、大声と共に迫る顔。
「しょ、庄ちゃん?」
乱れた髪と額に浮かぶ汗が余裕の無さを感じさせ、焦っていたのだろうと推測される。彼のこんな姿を見るのは珍しくて、どうしたのと問いかける。
「メールっ、入院って……!」
言われて自分が送ったメールの内容を思い返してみる。そういえば入院する旨だけ打って、原因には触れていなかったかもしれない。道理でこの慌て様。とりあえず落ち着いてもらおうと、盲腸だと告げる。
「そんな重いものじゃないらしいし大丈夫だよ」
「盲腸……」
「うん。暫く飲食できないのは辛いけどね。でも入院なんて小学生以来でテンション上がっちゃっ、ひゃ!?」
最後まで言い切れなかったのは決して噛んだからではない。目の前の彼に両頬を引っ張られたせいだ。容赦のないそれに痛いと涙目で訴えてみるけれど、離してくれない。怒っているのかとも思ったけどポーカーフェイスが邪魔して感情を読み取れない。どうしたものか困っていると、彼の唇が重々しく開かれた。
「辛いなら誤魔かさなくていいから」
「うん」
「心配した」
「……うん」
離した手で今度はその頬を緩くなぞりながら、一言。普段こういう感情を表に出さない人だからこそ驚いた。心配、してくれたんだ。
「なにニヤけてるの」
「なんでもなーい」
むっとした表情を見せられても緩む頬は戻らない。
いつも、私ばかり好きなんだと思っていた。でもちゃんと愛されていたんだ。解り易い愛情表現なんてなかなかしてくれないけれど、今この時にそれを実感して、暖かい何かで胸が溢れている。きっと、これが幸せというものだろう。ふて腐れた彼を見てそう思った。
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大好きな乙部ちゃんが入院と聞いてお見舞いに贈らせていただきました。
急だったからこんなので申し訳ないけど、これで少しでも気が楽になると嬉しいです。おとちゃん、早く元気になってね。