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最近、同級生の留君がやたらと絡んでくるようになった。いや、絡むの自体は今に始まった話じゃない。留君とは実家が近所で学園に入る前からの付き合いだから、顔を会わせば二言三言、会話を交わすくらいの絡みなら以前からあった。
でもここ最近はそれが頻繁にあるのだ。この男女別れた学園内で彼と会う事自体あまりないはずなのに、これはおかしい。それに、会話の時間も以前より確実に長くなっている気がする。
「今日は掃除当番か、名前」
「あ…留君」
噂…はしてないけど何とやら、今日も留君が話しかけてきた。
「うん、今ごみ捨てに行くところ」
「重そうだな、俺が持ってやるよ」
「えっ!い、いいよそんなの悪いし!」
「別に構わねぇよ。幼馴染相手に遠慮すんなって」
「え……と、」
これは弱った。留君は私の事を幼馴染だと言ってくれるけど、実は私はそう思ってない。彼は昔から人に囲まれている人気者だし、私なんて恐れ多くて馴れ馴れしく話しかけられない。
だから実家にいた時も特別仲良くしてたつもりはないんだけど、そういえば彼はよく私を気にかけてくれていた。私と仲良しだって友達に勘違いされたら迷惑じゃないのかな、とか考えていたら最近よく聞く別の声に名前を呼ばれた。
「潮江君」
「ごみ捨てか?そんなへっぴり腰ではまともに運べないだろう、俺に貸せ」
言うやいなや、私の両手からごみ袋を奪おうとする潮江君だったけど、それは同時に出された手によって阻止されてしまった。
「…なんだ留三郎、いたのか」
「最初からいたわ!手を離せ文次郎、このごみは今から俺が持っていくところだったんだ」
なんだか嫌な予感がする。犬猿の仲で有名なこの二人が揃ってしまうなんて。
「お前こそ離せ。先に掴んだのは俺だ」
「なんだと?」
これはやばい。今にも取っ組み合いを始めそうな位に睨み合う二人を見て瞬間的に悟った私は、思いっ切りごみ袋を引っ張って早口でまくし立てる。このまま巻き込まれてはたまらない。
「あっ、私そろそろ行かないと…二人ともまたね!」
「えっおい名前!?」
突然のことに驚いた留君が呼び止めるけど、聞こえないふりをして必死でその場から走り去った。こんな大きな荷物を抱えているのに、我ながら結構早く走れてたと思う。でも私が逃げた事で、とんでもない事態に陥っていたらしい。
「……おい文次郎。もう名前に近付くなよ」
「あ?そんなの俺の勝手だろ」
「お前の顔が怖いから名前が逃げたんだろうが!」
「ああ!?てめえこそ全然相手にされてねぇじゃねぇか!」
「なんだと!?」
「やるか!?」
私が原因で争いが勃発していたなんてこの時の私は知る由もなく、つかの間の平和を満喫していたのだった。
これってなにかの間違いですよね?
(私がそんな立ち位置なんてありえない!)
仲良しの夏祥ちゃんに捧げます。待たせた上に長ったらしくてごめんね><返品はいつでも受け付けてるよ!