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きり丸との約束の日、名前は図書室の入口前で一人佇んでいた。幸い周囲には誰もいないから良いものの、引き戸に手をかけようとしてはその手を戻しの繰り返しで、端から見れば不審な事この上ない。そんな行動をさせている原因はやはり、名前が人見知りだという事だろう。図書室内には特に苦手な年上の異性がいるであろう事を想像して、ずっと一歩を踏み出せずにいるのだ。そしてついに意を決し戸に手をかけた彼女に、背後から迫る影があった。


「図書室に何か用ですか?」


虚をつかれやや遅れて振り返れば、そこには昨日会ったばかりの人物の顔があり、名前は思わず後ずさる。紫紺色の制服は一つ年上の五年生だという事を示しており、それだけでも緊張するというのに、それを纏う人物が名前にとって警戒すべき要注意人物だという、非常にやっかいな事態だ。

問い掛けてきた彼は答えを待っているらしく、あ、う、などとどもっている名前を不思議そうに見つめている。そうやって見つめられる程緊張が高まり、余計に喋れなくなるという悪循環に名前が泣きそうになっていると、背中越しに戸が引かれ救いの声が聞こえた。


「あっ、名字せんぱい来てたんですか。」


なかなか来ないから、今から迎えにいこうと思ってたんですよ、と見上げてくる少年を振り返り、小さく安堵の息を吐く。今日自分を誘ったこの少年の名前を呼ぼうと口を開きかけた時、きり丸、と後ろから聞こえた声で、少年は自分の背後の人物に気が付いた。


「不破せんぱいも一緒だったんですか。」

「え?不破?」


おかしい。昨日初対面で自分をからかってきた人物は、そんな名前ではなかったはず。だが、顔は確かにこの顔であった。名前は疑問符を浮かべながら、不破という少年ときり丸を何度も見比べた。

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